演劇部バレンタイン公演-3
「ねぇ美咲!今日総選挙の結果が発表されるんじゃない?」
友達の理彩が話しかけてきた。
「そうみたいね!昼休みに発表されるみたいだから....もうすぐじゃない?」
「他人事みたいに言って....」
「私なんか入るわけないじゃないの!」
「わからないわよ!美咲...人気があるから!」
「理彩!変な事言わないでよ!」
正直..その時は本当にそう思っていた....
「朱羽高校バレンタイン祭に行われる演劇部公演の三年生による投票結果をお知らせします。」
校内放送が始まった。
「第三位....織田麻里....」
「えっ!麻里が三位?一位の間違いじゃないの?」
私は理彩に話しかけていた。
「やっぱり...北原ちゃんが一位なんじゃないの?」
いつの間にか直輝君が傍に来ていた。
「直輝君まで変な事言わないでよ!」
「直輝の言う通りよ!」
「理彩まで....」
私が照れていると
「第二位....松岡葵....」
「葵君が二位か....」
私が呟くと
「あの子可愛いから!」
「でも男だぜ!」
「学校祭の時は女の子と間違ったじゃないの!」
「そうだけど....」
理彩と直輝君の会話を聞いている時
「第一位...北原美咲....」
「えっ.......」
私は言葉を失った....
「おめでとう!美咲!」
「やったな!北原ちゃん!」理彩や直輝君だけでなくクラスメイトも声をかけてくれた。しかし、私は気が重かった....部員でもない私がセンターなんて....本当にいいのだろうか....そんな思いが頭を支配した....
放課後、部室に行くと
「おめでとう!美咲!」
麻里が声をかけてきた。
「本当に私がセンターでいいのかなぁ....」
私が不安げに呟くと
「大丈夫!私が保証するよ!ねぇみんな!」
麻里が笑顔で言うと
「ハイ!」
集まって来た後輩達が返事した。
「心配なのは、美咲じゃなくて.....」
麻里の視線を追うと、葵君が頭を抱えてうなだれていた。
「気持ちはわからなくもないけど....男に負けた私達のほうが、ショックが大きいのよ!いつまでも悩んでいないで!レッスンに行くよ!!」
麻里が葵君に近づいて行って声をかけた。
「ハイ!」
私達は立ち上がった葵君と一緒にレッスン場に向かった。
「ポジションも決まった事だし....今日からレッスンも厳しくなっていくよ!!」
中田先生の厳しい声が響いた。
「北原!!何度言えばわかるの!あんたはセンターなのよ!!もっと大きく!」
「ハイ!!」
「北原!!指先、爪先まで気にかけて!!」
「ハイ!!」
「北原!!何やってるの!ターンはもっと速く!!」
「ハイ!!」
「北原!!ステップはもっと速く!!」
「ハイ!!」
中田先生のレッスンは想像以上に厳しいものだった....
そんな厳しいレッスンが二週間ほど続いたある日、いつものようにレッスン終了後麻里と葵君と一緒に帰る途中で
「中田先生....酷くないですか?美咲先輩を目の敵にして....」
葵君が麻里に話しかけた。