演劇部バレンタイン公演-14
私達がステージに一列に並んでから
「今日は熱い声援を送っていただき本当にありがとうございました!」
麻里が叫んだ。
「ありがとうございました!」
私達もそう叫んだ。
「私達は今日の公演を忘れません!!本当にありがとうございました!!」
麻里が再び叫んだ後、私達は全員で頭を下げた。その後、私達はみんな「ありがとうございました!!」と言いながらステージからはけていった。
「葵ちゃん!助かったよ!ありがとう!!」
私はステージ裏で葵ちゃんに抱きついた。
「美咲先輩!一瞬焦りましたよ!」
葵ちゃんは笑顔で答えてくれた。
「えっ?何があったの?」
みんなが集まってきた。
「実は...私ターンの方向を間違って、麻里の方じゃなくて葵ちゃんの方に行っちゃたの....次の歌い出しは私のソロなのにマイクが無い....だから近くにいた葵ちゃんに目で合図したの....」
「あの時は焦りましたよ!次は美咲先輩のソロの歌い出しで始まるのにマイクを持っていない....何とかして....っていう目で見られても困るし....一瞬自分で歌おうかなぁって思ったんですけど....やっぱりボクが歌うより美咲先輩のほうがいいだろうから....ボクのマイクを渡そうと....で....ボクのマイクが無いので織田さんの方へ....」
「あの時はゴメンネ!本当は私が渡さないといけないのに....気づいた時はもう美咲が歌ってて....美咲のマイクがここにあるのになんでって思ってたら....葵ちゃんが近づいてきて初めて理解したの....それで葵ちゃんにマイクを....」
麻里が恥ずかしそうに言うと
「えっ?あれは三人のアドリブだったの?」
美結が聞いたので、三人で頷いた。
「やっぱりあなた達はすごいなぁ....あまりに自然だったので打ち合わせしてたのかと思ってた!」
美結は感心したように言った。
「アンコール!アンコール!」
客席からのアンコールの声が止まらなかった。美結が幕の間から客席を覗くと
「あいつら何やってるのよ!」
そう言った。
「えっ?どうしたの?」
私達も幕の間から覗いた。演劇部の男子部員達も一緒になって叫んでいるのが見えた。
「私達が練習した曲はもう残っていない事知ってるくせに....」
私は覗くのをやめて二三歩下がって
「ねぇ....何とか出来ないかな?」
私はみんなの後ろから声をかけた。
「えっ?」
みんなが一斉に私を見た。
「みんな!本当にダメなの?」
私はもう一度聞いた。
「私だって....出来るなら応えてあげたい....でも....足がパンパンで踊れないの....」
美結が言うと
「私も....」
何人かが声をあげた。
「私は声が....」
そう口にする者もいた。
「美咲の気持ちもわかるけど....私達もう限界なの....」
麻里が残念そうに言った。
「わかった.....」
私はそう言ってステージの上へと行こうとした。