都会の光-10
「何がですか?」
「里見くん。片桐に取られちゃうかもよ?」
…。
上手く言葉が出てこない。
悲しいし淋しいけど、私が口出しできる問題ではない気がする。
「…私は大輔くんの彼女じゃないですし、取られちゃうとかそういうのじゃないんです…大輔くんも片桐さんのこと気にしてましたから。」
言い終わると高橋さんがポンと私の頭に手を載せる。
優しい笑顔でしてくれて…
そういう所、大輔くんとそっくりだと思う。
「じゃあ、打ち上げ一緒にくる?打ち上げと言っても5人だし。事務所のメンバーでする小さな飲み会みたいなものだよ。俺から片桐に連絡しとくよ。片桐も後でくる予定だから。ゆりちゃんが来てれば里見くんも来るだろう。2人のとこには戻りにくいだろ?」
「でも…」
「大丈夫!俺が無理やり誘ったことにしとく。それとも行きにくい?」
「ちょっと…」
私が気まずいながらも、正直に答えると、高橋さんが笑いながら言う。
「正直者だなー。でも確かに来づらいよね。じゃあせめて連絡あるまで俺一緒にいるよ。寒いし温かいの飲もう。おいで。」
高橋さんが笑って手招きする。
高橋さんはそのまま裏口に入っていく。
躊躇いながら後をついていくと、幾つか部屋がある。
その一つに高橋さんの会社の名前が書いてある部屋があった。
高橋さんがロックを解除し、ドアを開けて中に入る。
高橋さんはどんどん中に入っていく。
人の気配はない。
気持ちの問題だろうか、皆さんが知らない所でなんとなく勝手に入ってしまうのも悪い気がして。
誰もいない中、控えめな会釈をして入る。
オシャレな空間。
事務所かな?
デスクやパソコンが並んでいる、すぐ近くに小さな机と椅子がある応接スペースっぽい所や、机と椅子が並ぶミーティングスペースっぽい所がある。
高橋さんがその応接スペースに座るよう促す。
椅子に座ると高橋さんは更に奥に行ってしまった。
携帯を確認しても、相変わらず連絡はない。
今頃2人で昔話でもしてるのかなって想像してしまう。
元彼氏彼女だもん。
思い出もたくさんあるだろうし、付き合い始めた日のこととか思い出すのかな…
…やばい!
忘れていたけど、そういえば今日誕生日…
誕生日に今日知り合ったばっかりの人と一体何をしてるんだろう。
高橋さんはいい人だし、身の危険を感じてるわけではない。
ただ、こんな夜ご飯もどうなるかわからない状態で…
誕生日に美味しいものも食べれないなんて…
チョコケーキたべなくちゃ…
…チョコケーキ食べたくなってきた。