ある雀師の散々な一手-3
目をこすり
目を擦って
見えたるは
泣く子も黙る
数え役満
僕「……」
あんぐりと
ひらいた口が
塞がらず
しばし呆然
思考は停止
僕「分かりますとも、その気持ち。役満をアガれると思ったら、役満に振り込んだんですもん」
『悪魔だ…』と
にやけた顔を
見て思い
現実世界
地獄に見えたり
僕「親満は48,000点だから(ハコッた)んですよね。その後どうなったんですか?」
彼「次で挽回したさ」
彼はそう言って夕日に向かって歩いていった。
ーーーー次で挽回なんて嘘である。自分に都合が悪くなるといつもこうだ。でも僕はその先を知っていた。
彼風に言うと、こうなるだろうか……。
『足りんやとぉ!』
見知らぬ兄ちゃん
ドスきかせ
着ぐるみはがされ
彼は半ベソ
(あれはヒドかったな。それから確か……)
ーーーー彼−
『泣かすなら
殺しておくれ
このボクを』
(彼はそう言って怯えていたっけ……)
(それにしても、3人の句に聞き覚えがあるのは気のせいだろうか?)
「おい、早く来いよ」
「はいっ、すみません」 僕は小走りで彼に追い付いた。
「あの、信長さんはどうしてあんな語り方をなさっていたんですか?」
「雀荘で一句詠んだら、クセになっちまってよ。あそこにいたら、なんか詠みたくなったんだよ」
「変な雀荘でしたからね」
「ほんと変なところだったよ。……でもな、他の奴は馬鹿にするが、俺はあの時確かに聞いたんだぜ〈神の声〉を。別に信じなくてもいいけどな」
「いいえ、僕は信じます。信長さんが聞いたって言うのならきっと聞いたんだと思います。だから気を落さないでください」
「そうか。ありがとよ」
信長が弱々しく僕に笑みを見せ、僕達は別れた。
あんな痴態をさらした信長はもうあの雀荘に行くことはないだろうーーーー。