昔のオトコ-8
焦らされたぶん軽いキスでは物足りなくて、唇が重なると同時に激しく舌を絡ませる。
会えない時間に溜まった色々なモノが、建前だけの理性をあっけなく踏み潰して、私を突き動かしていた。
今まで満たされなかった部分を埋めようとするように、何度も何度も角度を変えて一輝の中に潜り込む。
あんなに触れることを怖がっていたくせに、こうなってしまうともう全部が欲しくて歯止めがきかない。
止まらないキスにとうとう自分が息苦しくなって少しだけ口を離すと、溢れた唾液が顎を伝ってつうっと床にしたたり落ちた。
「……こんなエッチなキスも……そいつに教わったんだ?」
唾液の跡を親指でゆっくりと拭き取りながら、一輝が意地悪く囁く。
その質問には答えないまま、私は一輝の胸にしがみついた。
どうしよう―――。
どうしたらいいの―――?
嬉しさなんて微塵もなくて、不安と後悔と――ただただ純粋な欲望だけが私の中を埋め尽くしていた。
「……俺のことなんか……忘れちゃったって訳?……」
離れてしまった唇を追いかけるように、今度は一輝が顔を寄せてくる。
下唇を挟み込むように軽く吸い上げ、軽く歯を立てながら、何回も何回も深く重ね直してくる柔らかな感触。
時折漏れる溜め息にも似た吐息が段々と荒くなって、一輝の興奮が高まっているのが伝わってくる。
私はきつく目を閉じたまま、一輝の情熱的なキスに夢中で溺れた。
「ハァ……ヤバいよ祐希……我慢出来なくなる……」
ようやく唇を離した時には、私の下腹部に当たっている一輝自身のこわばりが、熱を帯びてむっくりと立ち上がり始めていた。
手首を掴まれ、熱い塊を握らされる。
大きさを確かめるように下から上に指を這わせると、びくんと一輝の腰が前後に揺れ動いた。
「……かず…き…っ……」
自分でもわかるほど欲情に濡れた声。
手のひらの中でじわじわと硬さを増していく一輝自身が、愛しくてたまらなかった。
欲しい。今すぐ―――。
「……祐希のナカに……挿れていい……?」
一輝が甘い声で囁きながら、私のスカートをたくしあげていく。
「で……でも……」
いつ人が来るかもわからないこんな場所で行為に及ぶことに抵抗感があった。
「―――嫌ならやめるよ。どうする?」
さっきは我慢出来ないと言って私を煽ったくせに、今度は余裕の表情。
本当は私の欲情が理性を上回ってしまっていることを、きっと一輝はわかっているのだ。
「……意地悪……」
セックスのはじめ方なんてもう忘れてしまった。
どんなふうに欲望をさらけ出し、どんなふうに相手を受け入れれば大人の女だと思われるのだろう。
戸惑い迷う私の反応を楽しむように、パンストの上から内腿を撫で上げる一輝の指先。
「……あ……っ……んんっ……」
「……もしかして……もう濡れてるの?」
わざと羞恥を煽るような一輝の言葉に、全身がカッと熱くなる。
セックスに飢えていたみたいで、キスだけで濡れてしまったことを知られるのが恥ずかしい。
必死で首を横にふって視線をそらすが、とてもごまかしきれるような程度の濡れ方ではないことは自分でもわかっていた。
「……ほら……ココ……」
中指で、くちゅり……と蕩けた窪みを圧迫される。
「あっ……ダメっ……あぁっ……」
そのまま割れ目を捏ね回すようにぐにぐにと動かされると、敏感な部分に刺激が走って身体がびくんと跳ね上がった。