序章-7
「……なんか……凄い人と友達になった……のかな……?」
本人は偉くないと言っていたが、姫と普通に会話しているだけで一般人にとっては偉いのだ。
あまり深く考えない事にしようと、ケイは頭をポリポリ掻いて仕事に戻った。
その頃、馬車の中では爆笑の渦が巻き起こっていた。
「あはははっにゃ…にゃんこ」
「ダメ……腹痛ぇ……」
『お前ら笑いすぎだ!!』
涙を流しながら笑い続ける2人に、グロウは尻尾を叩きつける。
「いや……悪ぃ……くくっ……でも、にゃんこって……」
再び笑いの発作に襲われた2人に、グロウは憮然として背を向けた。
「あ〜…笑ったぁ〜」
やっと発作が治まったアースは背もたれに体を預けて息を大きく吐く。
「ああ、もう。グロウのせいで化粧崩れたじゃねえかよ……」
『俺のせいじゃねぇ』
手鏡を見て化粧を直すキャラに、グロウは人のせいにするなと牙を剥いた。
その様子を見ていたアースはグロウに違和感を感じる。
「……そういや、グロウ。キャラの事は諦めたのか?」
違和感の正体は、グロウのキャラに対する態度……あまりにも普通すぎる。
昨日も快く護衛を代わってくれたし、今日も特に何も言わない……自分の性格上、惚れた女を簡単に手離すはずは無いと思うのだが……。
『諦めるも何も、俺他に好きな女いるし』
「はぁ?」
グロウの答えにアースはあんぐりと口を開ける。
「誰だよ?!」
『教えねぇよ♪ま、そんなわけだから遠慮なくどうぞ』
アースは思わずキャラを見るが、キャラは肩をすくめて心当たりが無い事を示した。
港に着くと既に船が到着しており、乗客が降りてきている。
「あ〜!!キャ〜ラ〜!!」
頭にアビィを乗せたエンがキャラに気づいて大きく手を振った。
「エンさん!!」
ドレスの裾を持ち上げたキャラはエンに駆け寄って抱きつく。
「わぁっ」
まさか、キャラから飛びついてくるとは思ってなかったエンは大慌てでキャラを支える。
「あはは、びっくりしたぁ〜今日はお姫様なんだねぇ♪超キレイ♪」
「こっちじゃいつもお姫様ですよ。また会えて嬉しいです」
『キュ』
アビィが自分も自分もと両手を出してせがむので、キャラはクスクス笑いながらアビィを抱いてやった。