序章-17
「うちの精霊使いのドラゴンで行きます。私とキアルリア姫。後1人、視力に自信がある者が欲しいですね」
「キアルリア姫をか?!」
「彼女の魔力がドラゴンにはエネルギーになります」
いつの間にか会議の中心になったアースに矢継ぎ早に質問が浴びせられる。
「後1人というのは?」
「ファンとゼビアだけじゃ信用できない所もあるでしょうから」
納得した国王達は、カイザスから視力の良い兵士を選出した。
「エンはアビィと意識を共有できるので、こっちで実況してもらいます。キアルリア姫、動きやすい服装になって下さい。カイザスの……ピート?結構猛スピードで行くが大丈夫か?」
アースの言葉にキャラは自室に戻り、ピートは少し不安げではあるがしっかりと頷く。
「何か……引力のある男だな」
ギルフォードが呟いたのを聞いたゼビア国王が申し訳ないような顔になる。
「でしゃばってしまって……」
「いやいや、責めているのではないんです……なんと言うか……彼がこの場で『右向け、右』と言ったら全員右向くだろうなぁって」
ギルフォードの例えに、話を聞いていたカイザス国王が吹き出した。
「確かに!天性のリーダーという感じですな」
「短気ではありますがな」
「そこはキアルリア姫が上手く抑えておるではないですか」
2人の関係はすっかりバレバレな様子で、ゼビア国王とギルフォードは気まずそうにお互いを見る。
「うちのデレクシスもしっかりしてもらいたいのですが……どうもフラフラしておっていかん」
カイザス国王の人生相談が始まろうとした時、着替えたキャラが戻ってきた。
黒いスリムパンツにブーツ、白い長袖Tシャツの上からモスグリーンの半袖シャツを着たキャラは、さっきまでドレスを着ていた人物とは別人だ。
「おっし、んじゃぁ行って来ます」
アースの合図にエンが頷いてアビィを巨大化させ、その背中にアースが飛び乗る。
アースの前にドラゴンに乗るのが初心者のピート、一番前がキャラになった。
(姫に変な事したら海に叩き落とすからな)
後ろから小さい声でアースに脅され、ピートがビシッと固まる。
「ホントに落ちたらどうすんだ馬鹿。ピート、大丈夫だからしっかり掴まってて」
キャラはアースを怒ると、ピートの手を取って自分の腰に回させた。
チッと後ろから舌打ちが聞こえたピートは、これ以上腕を動かさないようにしよう、と心に誓う。
3人が乗った事を確認したアビィは、翼を大きく広げて地面を蹴った。