序章-15
「休憩終わりっと……戻りましょうか?キアルリア姫」
「はい。導師様」
ふざけて手を差し伸べるアースに、しおらしく返事をしたキャラはクスクス笑って手を重ねる。
何事も無かったかのように庭に戻った2人は、ゼビアの騎士団が集まっている場所に行く。
「呑みすぎんなよ」
「おっと隊長!キャラ……キアルリア姫もご一緒ですか?」
「今更、姫扱いはやめて下さい。キャラで良いですよ」
キャラが苦笑いすると、騎士団員達は吹き出して笑いだした。
「まさか姫だとはなぁ〜」
「隊長知ってたんですかぁ?」
「途中からな。国王とエンと……あと、俺の親が知ってた」
騎士団員達はキャラを囲んで再会を喜び、その騒ぎに他国の兵士達も集まってくる。
その様子をテラスから見ていたイズミとデレクシスは少し驚いた。
「キアルリア姫ってあんな顔するのね……」
いつもは無表情で、兄達の側から離れず、話しかけても必要最低限の事しか話さない。
「本当にな……」
ゼビアの騎士団員達と話すキャラは、とても柔らかい笑顔だ。
「女あさりばかりしてねぇで、お前ぇも城から出て見ろや」
いきなり現れたゼビア国王に肩を抱かれたデレクシスは嫌ぁな顔をして目を向けた。
「どういう事ですの?」
イズミが首を傾げてゼビア国王に聞く。
「デレクが第3王子、イズミが第2王女。お前ぇらはぶっちゃけ自分の国の王になるのは難しいやな」
兄姉を殺してでも王になりたいってんなら別だかな、と言うゼビア国王に2人はそこまでする気はないと、首を横に振った。
「って事はだ、他国かどっかの貴族に嫁なり婿に行くだろ?そこで、自分の常識を相手に押し付けたらどうなるよ?」
ハッキリ言って迷惑以外の何者でもない。
「キアルリアみたいに他の大陸に行けとは言わねぇが、まずはお忍びで街に行って国民と同じ目線で国を見てみろ。世界が広がるぜぇ?」
ガッハッハッハと笑うゼビア国王の言葉を頭で繰り返しながら、2人は再び庭に視線を移す。
なんだかわからないやり場のないモヤモヤを誤魔化すように、日々異性と遊んでいた2人は考えこんだ。
城から出たら……この気持ちは消えるのだろうか?
そんな2人をニヤニヤして見ていたゼビア国王は、ふと真面目な顔になって広間を振り返った。