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ゼビア・ズ・ストーリー
【ファンタジー 官能小説】

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序章-14

「疲れた……癒して」

「甘えるな」

 キャラはアースの鼻を摘まんでグニグニと揺らす。

「ふぐっ」

 アースは嫌な顔をしてキャラの手を握った。

「しっかし、イズミ姉ちゃんはどういうつもりなんだ?」

 アースは指を絡ませてキャラに聞く。
 魔法学校や騎士団でなら実力があればモテる。
 しかし、王族や貴族の基準は実力もだが何と言っても地位が大事だ。
 物凄く微妙な地位だと自覚しているアースにはイズミの行動が不可解なのだ。

「つまみ食いしたいんだろ。王族ったって蓋を開けりゃ一般人と一緒だよ」

 外見が気に入ったから一度寝てみたいんだろう、と言うキャラにアースは渋い顔になる。

「デレクシスもか?」

「あいつは姫の間じゃ有名なタラシだな」

 気に入った姫がいたら必ず手を出して、なびかない場合でも薬などを使ってものにする。
 デレクシスは自分より地位の高い姫には手を出さないので、同意でない場合でも姫側は泣き寝入りするしかない。

「姑息ぅ〜」

 アースの嫌いなタイプだ……こうやって聞くとラインハルトの行動が可愛く思えてくるから不思議だ。
 ラインハルトの場合、身内にしか迷惑をかけてない。

「王族、貴族なんてそんなもんだ。その代わり国の為、民の為に自分を犠牲にする事には躊躇しない」

 民あっての国、それを守る為なら何だってする。

「そんなだからプライベートで暴走すんだよ。民だって国を守りたい気持ちに変わりはねぇんだ。少しは頼れ」

 アースは民側の意見としてキャラに伝えた。

「アースらしい意見だが、普通はあんたほど強くないし、あんたは今こっち側の立場だ」

「そうでした」

 クスリと笑ったアースはキャラの手に口付け、下からキャラを見上げる。
 キャラは反対の手でアースの頭を撫でながら見返した。

「ん?」

 月の逆光で照らされたキャラは本当に綺麗で何処かに閉じ込めてしまいたくなる。
 暗い感情が湧いてしまったアースは、それを自分の中に留めようと目を閉じた。
 微かに頬に何かが触れ、目を開けると同時に唇に柔らかいものがそっと重なる。

「癒された?」

 キャラは微笑んで唇を離した。
 頬に触れたのはキャラの髪だった。

「足りねぇ……」

 しかし、『控えろ』とラインハルトに注意を受けたばかりなのでこれ以上したら怒られる。
 仕方なく体を起こしたアースは油断しているキャラにチュッと音をたててキスすると、立ち上がって大きく伸びた。


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