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ゼビア・ズ・ストーリー
【ファンタジー 官能小説】

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序章-11

「まあ、ゼビアの次期国王代理の話は今初めて聞きましたが……」

 殴られた事については触れないあっけらかんとしたラインハルトの様子に、毒気を抜かれたゼビア国王はアースを離して説明した。
 説明を聞いたラインハルトは、いちいち全員を回るのも面倒だろうと会食を中断して、ゼビア国王がアースを紹介する形をとってくれる。
 おかげで長々と時間を取られる事も無くなり、アースは心底ホッとした。

 簡単に挨拶回りをしてやっと一息ついたアースは、会場の窓際に立ち、グラスをもて遊びながら周りを見回す。

 ベルリアとエンの姿は見えないので、庭の方に居るようだ。
 ゼビア国王は他の国の王族と話をしている。
 ギルフォードはステラと、ラインハルトはキャラと広間の中央で踊っていた。
 キャラは昼間と同じ青いドレスで、大きくスリットが入ったセクシーなもの……いざというときに動けるようになっているのだろう。

「アース様?よろしかったらわたくしと踊っていただけませんか?」

 突然、声をかけられて少し驚いたアースはそちらに目を向けた。
 そこには赤色のドレスを着た女性が1人。

「ええっと……」

 まだ招待客を覚えきっていないアースは必死になって頭の中を検索する。
 黒く艶やかな長い髪、深緑の目、アースと同じ年頃のこの姫は誰だったか……。

「サイラ国の第2王女、イズミですわ」

 アースが元は一般人なのがわかっているので、イズミは特に気にせずに自ら名乗った。

「失礼致しました、イズミ姫。しかし、私と……ですか?」

「ええ、貴方とですわ」

 姫から誘うのはかなり大胆な行動。
 よほどアースに興味があるのだろう。

「喜んでお相手致しますよ……ただ……」

「ただ?」

 言葉を切ったアースにイズミは小首を傾げて続きを待つ。
 どこか媚びたような仕草に内心うんざりしながらもアースはイズミの耳に口を寄せた。

(ダンスはかなり苦手なんでフォローお願いします)

 こっそりと打ち明けられた内容にイズミはクスクス笑いながら頷く。

「では、イズミ姫。お手をどうぞ」

 差し出したアースの手にイズミは自分の手を重ねた。
 あまり目立たない場所を選んで移動したアースはイズミの腰に手を回し、2人は曲に合わせて踊り始める。

「思っていたよりもお上手ですわ」

「イズミ姫にお墨付きをいただけて良かった」

 至近距離で会話を交わしつつ、くるくる踊る。


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