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忘れ得ぬ人(改稿)
【同性愛♀ 官能小説】

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側聞/早苗とその娘・茜は-3

「ママ、ただいま」
「レッスンどうだった?」
「・・・・・」
「何かあったの? 半べそかいちゃって」
「14番・・・止められちゃった・・・よっぽど聞いちゃいられないくらい下手だったのかなあ・・・自分では結構いいと思ったんだけど」
「あ、それ、違う」
「またあ?」
「それで?」
「15番へ飛ばされた。茜・・・15番より14番の方が好きなんだけどなあ。14番、もっと、茜が納得するように教えてほしかったのに」
「いずれ戻れるわよ。それに、ショパンはマズルカだけじゃないんだから。大変なんだから」
「そりゃそうだけど・・・なーんか引っかかるのよねえ・・・」
「何か引っかかる・・って?」
「だって、先生・・・今日は茜の顔を包んで撫でながら、涙浮かべてるんだもの。あんなこと初めてなのよ。茜・・・先生を好きになりそう」
「・・・・・」
「あ、変な意味じゃなくてよ。そうじゃなくて、先生と呼ぶより彩乃お姉ちゃんって呼びたくなるくらいの親しさを感じたってことだけど、ちょっと違うんだなあこれが。茜・・・変?」
「・・・・・・」
「女性が女性を好きになるって・・・やっぱり変かなあ。恋したってわけじゃないんだけど」
「・・・・・・」
「何か言ってよママ。黙っちゃったら話が変になるよ。っていうか・・・ごめん、茜、変なこと言っちゃった?」
「そうじゃないの・・・彩ちゃんのことを考えちゃったの」
「彩乃先生とママとの間に何かあったの」
「そうじゃないの・・・」
「ママも変。ハッキリしてよ」
「ごめんね。話すわ・・・あのね・・・」
「うん・・・」
「やっぱり今は話せない。もうちょっと待って」
「もう・・・」
「茜も中学2年かあ。早いものねえ」
「なにさ今更」
「彩ちゃんが中学2年の頃を思い出しちゃったのよ。あの彩ちゃんが茜と同じ年だったんだと思ったら、急になんだか切なくなってきちゃったの」
「先生が茜の頃? へえ、どんなだった?」
「綺麗だった・・・とっても可愛かった。ママは高校生なのに、年上に見えるくらい大人びていたのよ。東京から越してきて1年かそこら経った頃だったわ。茜には話していなかったけど、彩ちゃんのお家、山際に新田さんていう大きな古民家があるでしょ?」
「知らない」
「まあいいわ。そこに新田さんのご夫婦と暮らしているの。ママたちが集まるのは、新田さんちの彩ちゃんのお部屋なの」
「へえ・・・そうだったの。でも、長野に越してきたんでしょ? なんで新田さんのお家になんかに居るの? 下宿かなにかなさってるの?」
「そうじゃないの。その新田さんちの100mくらい手前に煉瓦造りのしゃれたお家があるの、知ってる?」
「通ったことはあると思うけど、よく覚えてない・・・」
「今は大分建て込んできたけど、ママが高校生の頃は、新田さんちと新築の瀬戸さんのお家だけの寂しい所だったわ」
「あ・・・彩乃先生・・・」


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