「超合体浪速ロボ・ツウテンカイザーV〜新世界征服ロボの挑戦〜」-6
「よ、よし、この場はあれやな…。ひよこ、何とかザンジオラとグランパスドラゴンを争わせて、勝ち残って疲弊した方と闘うんやっ!!」
『そ、そんなん、どないすんねんなぁっ!』
『方法はどうすればいいんです?博士っ!!』
「…いや、方法は自分らで考えて。そこまでは儂もよう頭まわらんし…」
『阿呆ぉおっ!!無責任親父ぃっ!!』
役に立たない父親をなじるひよこ。しかし、恭子は何とかしようとユーナに回線を開いて呼びかけた。
『ユーナさん、ユーナさんっ!!このまま火星獣に火星を渡していいんですか?火星を、いえ、宇宙を支配するのはユーナさんじゃないんですか?お願いです、一緒に闘いましょうっ!火星獣を倒した後で、正々堂々と決着をつけましょうっ!!』
必死に呼びかける恭子。しかし、ユーナはその呼びかけを冷酷に笑い飛ばした。
『莫迦めっ!!誰がそんな提案を受け入れるかっ!正義のロボットと手を組むよりか、悪の火星人と共闘した方がまだましよっ!』
『…そ、そんなぁっ!?』
『こんな好機を自ら捨てる莫迦が何処にいる?それに、手強いのは火星獣ではなくてツウテンカイザーだっ!火星獣など、ツウテンカイザーを倒した後でゆっくりと料理してくれるわっ!!』
ユーナは言葉通り、攻撃の手をまるでゆるめなかった。ツウテンカイザーは頑丈に出来ているものの、やはり内部メカや駆動系に損傷が出始める。
『叩いてっ!砕いてっ!!微塵にしてっ!!!最後は挽き割り納豆にしてくれるっ!アハハハッ!!』
狂気じみた哄笑を上げるユーナ・オストアンデル。一方で、衝撃を受けまくるコクピット内ではひよこと恭子が悲鳴を上げる。
『うわぁああんっ!私、納豆はあかんのやぁあっ!!匂いも臭いし、ねばねばしてるしぃっ!!納豆はいややぁあっ!!』
『きゃあっ!ちょっと、ひよこ。訳の分からないこと言ってないで、何とか反撃をっ!!』
もはやツウテンカイザーは風前の灯火。そこへ、たまりかねた王鷹がひよこに呼びかけた。
「大丈夫だ、ひよこっ!最近の納豆は関西への市場を開拓しようと、関西人でも食べやすいようになっているっ!!小粒で匂いも少な目。タレや海苔が付いている物もあって、頑張ればきっと食べられるようになるっ!!」
自信満々に語り掛ける王鷹。その傍らで十文字博士も娘に呼びかけた。
「儂は関西人でも納豆好きやけどなぁ…。タレとか海苔とかは邪道やで。やっぱり納豆には葱と卵と醤油をかけて食べるんが、一等旨いっ!」
『ド阿呆ぉおおっ!!納豆の話はどうでもええんやっ!!』
『博士も王鷹さんも、そんな事よりこの場を何とか切り抜ける方法をっ!!』
ひよこ達の呼び掛けに、考え込む王鷹と十文字。やがて、渋面を作って考え込んでいた十文字博士が、意を決したように頷くと、懐から一冊の本を取りだした。
「おい、ユーナ。映像の回線を開けっ!この本が何か分かるか?」
十文字博士の呼び掛けに、ユーナは一瞬攻撃の手をゆるめた。すると、律儀にも火星獣までその動きを止める。
「…あっ!ま、まさかその本は……!?」
コクピットのディスプレイに、ハードカバーで鍵の付いた本が大きく映し出される。その本を見て、動揺の色を浮かべるユーナ。
その映像はツウテンカイザーのコクピットにも映し出され、ひよこと恭子は眉をしかめてそのタイトルの文字を読みとった。
「……ゆなりんの内緒の日記帳??ゆなりんって、もしかして…」
まるっこい少女文字で書かれたタイトルを、恭子は思わず呟いた。
「うぁあああああああああっ!!!わぁあああああっ!!だぁああっ!!黙れ、黙れぇぇえええっ!!」
赤面し、大声を張り上げる冷酷な支配者ユーナ・オストアンデル。
『もしかせんでも、“ゆなりん”とはユーナの事じゃ。こんな手段は使いたなかったけど、もはや止むを得まい…。もし、このままツウテンカイザーに攻撃を加えるのなら、この場でこの恥ずかしい日記帳を読み上げるぞ!!』
十文字博士の脅迫に、思わず引きつった笑みを浮かべる“ゆなりん”。
「ふ、ふん、誰がそんな脅しに屈するものかっ!第一、その日記帳は鍵がなければ開かないぞ」
虚勢を張るものの、ユーナの声は明らかに上擦っていた。そして十文字博士は、ニヤリと不敵な笑みを浮かべると、ポケットからクリップを取り出し、指先でくいっと先を伸ばして見せた。
『ふふふふ、儂という科学者を舐めんなよ…』
続いて、クリップの先を鍵穴に差し込み、こちょこちょと手を動かす十文字博士。固唾を飲んで見守るユーナ、そしてひよこ、恭子。ザンジオラまでもが動きを止め、事の成り行きを見守っている。