異界幻想ゼヴ・クルルファータ-26
「一体こいつら何なのよ?」
ウィンダリュードが唇を尖らせて、デュガリアに問う。
「甘くて反吐が出そうだわ」
「これでまだそういう関係にないと主張されるんですから、もどかしいですねえ」
「本当なのか?」
ヴェルヒドの声に、デュガリアは頷く。
「何が彼女を躊躇わせるのかは分かりませんが、彼の重荷になりたくないと主張してまして。彼女を重荷に感じるようなら、ここまで甘やかす事は絶対やらない気性の男ですのに」
「恋は盲目、とはよく言ったものね」
ふんと鼻を鳴らし、ウィンダリュードは目を閉じて再び寝転がる。
「明日の探索、あんたにも協力してもらうわよ」
干し草小屋を借りるまでの間にデュガリアの神機の能力はある程度把握したので、ウィンダリュードはそう要請した。
「それは構いませんが……」
躊躇いの見える語調に、彼女は片目を開ける。
「何よ?」
「そろそろエネルギーを供給しないと、僕が食べられてしまいそうなものでして」
出立前にじっくりエネルギーを溜め込ませたのだが、その残量ははやくも心許ない。
「は?バランフォルシュから分けてもらえばいいだけの話じゃない」
眉をしかめたウィンダリュードの声に、デュガリアは驚いた。
彼が学んだ神機戦術論は上位と下位のエネルギー供給に関する互換性などには、一言たりとも触れていない。
「ウィンダリュード」
ヴェルヒドの声に、少女は声を飲んだ。
ダェル・ナタルの人間は知っていてもリオ・ゼネルヴァの人間が知らない、もしくは試していない事柄を場の勢いに任せて口外してしまったのだと気づいたからだ。
「……まあ、今の所はヒントを与えてくださってありがとうと礼を言っておきましょう。僕は休みますよ」
まずい雰囲気をそう言って断ち切ると、デュガリアは自分のマントを被った。
片手は油断なくパリーイング・ダガーを握りながら、寝息を立て始める。
「……ドジ」
言葉少なに、ヴェルヒドはウィンダリュードを責めた。
「だって、知らないとは思わないじゃないっ」
「そりゃな……あっちの人間がバランフォルシュの活用法を知らないとは、普通は考えないか」
息巻くウィンダリュードをなだめつつ、ヴェルヒドはため息をついたのだった。