異界幻想ゼヴ・クルルファータ-10
「……起きたか」
不意に目を開けて、ジュリアスが笑った。
半身を起こすと、口に手を当てて欠伸をする。
「気絶しちまったからどうしようかと思ったが、大丈夫そうだな」
どうやら、自分の意識が戻るまではと居眠りを決め込んでいたらしい。
「うん、まあ平気だけど……」
恨みがましい目でジュリアスを見ると、小さい声で笑われてしまった。
「あれは誰でもできるわけじゃない。もっと胸を張ってもいいくらいだぞ」
「やぁよあんなの」
間違えて小水を漏らしているような感覚は恥ずかしい事この上なく、深花は唇を尖らせて抗議した。
拗ねているのに愛らしい表情に見とれてから、ジュリアスはそっと体を屈める。
唇を奪ってから、目を覗き込んだ。
「で、すっきりしたか?」
「え?あ……」
体を支配していた衝動は、綺麗さっぱり消えている。
「〜〜〜〜っ!!」
悔し紛れにジュリアスの胸板を叩いてやるが、叩かれた当人はどこ吹く風といった涼しい顔だ。
「こらっ!?」
いきなり股間を触られたジュリアスは、狼狽した声を上げる。
「……普通ね」
いつまでも力をみなぎらせているわけではないだろうが、しぼんでいるので少し驚いた。
「お前が満足したのに、勃てて欲しいのか?」
「だって……つらくないかなぁって」
肉体的には何とかなるが、精神的にはかなりきつい。
「……今は平気だから触るな」
今のように竿部分を上下にさすられていると、欲望が頭をもたげてしまう。
自分の欲望より優先すべきは、深花の体。
それが、パートナー間の義務として肌を合わせる時の条件だ。
「っ……あぁ、ほら」
恥ずかしい目に遭わされたがまだ離れたくないので復活して欲しいと肉棒を撫で回していた深花は、ジュリアスの呻き声に思わず微笑んだ。
手の中で、しぼんでいたそれが徐々に勢いを取り戻す。
「せっかくおとなしくさせたのに……」
器官に絡みつくなよやかな指の感触に、ジュリアスはため息をついた。
いつ召集がかかってもいいように手短に済ませるつもりだったが、こんな事をされてはもっとしたくなるではないか。
「深花……」
ややかすれた声で、ジュリアスは名を呼ぶ。
させる気がないならこんな事はしないだろうしと開き直り、ジュリアスは深花を抱きすくめた。
「ん」
期待した以上の反応に、深花は微笑んで抱擁に応える。
厚い胸板に顔を伏せれば、心臓の鼓動が伝わってきた。
「っ……!」
いきなり乳首に吸い付かれ、ジュリアスは呻き声を漏らした。
「……なんで今日は積極的なんだ?」
柔らかな舌先がうねうねと動いて乳首を刺激するのを眺めながら、彼は尋ねた。
「んー……」
乳首から舌を離すと、深花は自分の口許を示した。
「何か不平があるのかと思って。欲求不満な事でもなきゃ、普通噛み付かないだろうなって思うし」
指先が綺麗に浮き出た外腹斜筋を撫でると、ジュリアスの肩がぴくりと震えた。
「不平、な……」
ごろり、とジュリアスは仰向けになる。
深花はいそいそと近づき、垂直にそそり立つ肉棒に手を添えた。
程よい圧力でゆるゆると手を上下させれば、淫茎はより張り詰めて先走りを垂らしだす。