第2章-3
住職の後に裸の真梨子が従い、その後ろに芳念が付いてくる。
真梨子は恥ずかしかった。
彼女の心の中には、裸の自分の後ろを男性がいることの躊躇いと、
後ろ姿を見られている羞恥が入り交じっていた。
そのマットは程よい固さだった。
真梨子はその上に寝た。
「あの・・私はどうすれば良いのでしょう」
「目を閉じて、仰向けで手を胸の前で合わせて待ちなさい」
「はい、わかりました」
真梨子は言われたとおりにした、
足を閉じ胸の前で手を合わせていた。
そうすると、何故か今自分の心はここに無いような気がする。
それは走馬燈のように彼女の頭の中で廻っていた。
小さい頃・・・中学生の頃・・・高校生の頃
そして、社会に出て、無我夢中で頑張り、仕事では成功はした。
しかし、女として幸せを掴めなかった。
それらの様々なことが真梨子の頭の中で巡っていた。
今、自分が性的に感じない身体になった原因を考えていた。
何かを思い出していると、ふと或る思いが心の中を過ぎった。
それは今でも、心の中に封印し思い出したくないことだからである。
自分が今、悩んでいること、その原因はそれだと気が付くのである。
それは彼女が16才の頃だった。
あの忌まわしいことがなければ、
恐らく自分の中の男性恐怖症にはならなかった、
と改めて思う真梨子である。
しかし、身体は成長しながら性に目覚めながらも、
心の中では異性との接触を拒む自分がいた。
真梨子の小さい頃、彼女の父は病気になった。
仕事で無理をして身体を壊したからである。
父は、若い頃から働いた資金を元手にして小さな会社を作り、
或る事業を始めていた。
始めの頃は会社は順調だった。
会社は人手が足りず、
若い頃の経験を往かし母もそこで事務をして働いていた。
優しい母に、従業員達の評判は良かった。