「じゃあ大きくなったらね。」
小さい頃大好きだった隣の家に住むお兄さん。
セピア色の髪と瞳が印象的で、整った顔つきは誰もを魅了した。
もちろん、小さい頃のあたしも。
誰よりも、好きだった。
「恋歌〜遅刻するわよ」
ふぁ…大きなあくび一つ。 葵 恋歌−あおい れんか−はようやく制服に着替え終わったようだ。
今年で高校二年生に進級。危ういと思われた保健体育の単位も何とかぎりぎりのところで難を逃れた。
「今、行くよ。」
適当な返事を返し、無造作におかれたカバンを掴み階下に続く階段を駆け下りた。
「いってくる!」
慌ただしい朝は彼女の家にとっては当たり前の事。