PiPi's World 投稿小説
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No34-2010/02/22 23:49
男/リンク
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>33より

うずくまったまま動かない人影。闇に目が慣れるに従い、それが一体だけではないのが分かってきた…。

部屋の隅に一人、机に寄り掛かるようにして一人、寝台に横になって一人、いや…二人。

アキラ君が僕に囁いた。語尾が震えている。
「あ…あの人達…し…死んでるのかな?」
僕は思わず生唾を飲み込んだ。ゴクリ、と予想以上に大きな音がした。
「お巡りさん…呼んで来た方が…良いよね?」
僕も囁いた。口が乾いていた。
アキラ君が僕の腕を黙って掴んできた。うん、という意味だと思った。
僕等二人は、どちらからともなく後退りを始めた。足音を立てちゃいけないと、何故か思っていた。息を殺し、出来るだけ静かに…入ってきたドアに向かって踵を返した。

…その時。僕の踏んだ木製の床が、不気味に大きく軋んだ。僕等は、上げかかった悲鳴を必死に喉の奥に飲み込んだ。

すると…前方の人影が。

低く…太く響くような、地鳴りのような物音と共に…ゆっくりと動き出した…。

堪えていた叫びを放ったつもりが、声にならなかった。僕等は先を争って、ドアに向かって走った。



Next→『走った』でお願いします☆
No33-2010/02/02 23:44
女/桜井
822P-5ys4E6s0
遅かったのではなくて、最初から無理な話だったのだ。まだ若い雲雀のように旺盛な妹の好奇心を抑えきれるはずもなかった。

「だからムダなことだと言ったのに、にゃん」

「……イリスを呼んだのは貴方ね」

「やーだァ、にゃん。僕じゃないよおマジで。ウサギは勝手に来たのだ」


にゃん、にゃん、とわざとらしく鳴く猫がただの猫ではないことは分かりきっていた。その妖しげな猫の言うことが、事実であることも。
妹はウサギを追っていった先、その女に出逢うだろう。私ではない私。私の国の王である、私。

「そう、君ではない君。君が認めたがらない君。横暴で、傲慢で、高慢で、残忍で……」

「黙りなさい!」

堪えられず声を上げた私に、猫は酷く嬉しげににゃん、にゃんと鳴く。

「ご命令とあらば従いましょう?我らが女王陛下。僕らはみんな君の家来なんだから、ネ」


そう言って猫はぷつりと存在を消した。私は動けずに、ただただ妹の見るであろう世界を思って、うずくまった。






^^^^^^^^^
今年もしりとって参りましょー!
『うずくまる』or『うずくまった』で^^
No32-2009/12/30 02:04
男/白いフクロウ
831P-OtmwnKgP
グラスを傾けた格好で、彼は硬直した。
いや、彼だけではない。ある者はスパゲッティを巻いたフォークを持ち上げたポーズで、ある者はドリンクバーへ向かって歩く途中で、またある者は接客する姿勢で、全員が銅像のように硬直していたのだ。
まるで、店内の時間が停止したようだった。
しかしそうではない。その証拠に時計は針を刻んでいるし、なにより私は動けている。
成功だ、と私は、ハンドバッグの中に忍ばせた常温で気化する新薬の覿面の効果に満足していた。
私は、そのせいで完全に油断していた。
うっかり私は、止めていた息をほんの少しだが吸ってしまった。
「しま……っ」
そう言ったときには遅か


『遅』で。
No31-2009/12/25 10:16
男/フロムポスト
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次は『グラスを傾けた』からお願いします。
No30-2009/12/25 10:15
男/フロムポスト
CA38-kJEqyDBA
ランプに火を灯し、ツリーの装飾用電球を点け、部屋の電気を消したところで、あぁ、今日はクリスマスだったんだ。とぼくは実感した。
偶然とれた休みだった、それが偶然彼女の休みと一致した。
だからぼくらはこうしてテーブルの向こうとこちら側居る事が出来ている。
酔いが少し回って、お互い、口数も少なくなってきた時だった。
「ねえ」
彼女が唐突に口を開いた。
「生きてると、自分よりずっと年上なのに、この人は一体今まで何を考えて生きて来たんだろう、って思う人に出会わない?」
「勿論出会ったよ」とぼくは頷いた。「社会に出てからはもっとね」
こくりと、彼女は頷いて、言葉を続けた。
「でもね。最近、そういう人達を私達は理解すべきだと思うようになったの」
「うん」
「そういう人達は、きっと生きる事に必死だったのよ。余計な事を考える暇なんか無かったの。だから、私達はそういう人達を理解すべきなんじゃないかしら」
僕は彼女の言葉の意味をしばらく考え、言った。
「つまり、生きる事に必死じゃなかったから、僕らみたいな人種が生まれた。そしてあっち側からはこちらを理解出来ないから、せめてこっちからは理解しよう。そういう事?」
「そう」と彼女はグラスを傾けた。
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