PiPi's World 投稿小説
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No598-05/29 13:09
男/白い梟
811SH-VsNpRZXX
香りがする。
死の香りだ。
オレは息を潜め、香りの元を探した。
さほどの混雑はない車内。乗客は7人ほど。このなかのだれかが、もうすぐ死ぬ。
人の死期がわかる。オレは生れつきそんな能力を持っていた。しかし、それはなんの役にも立たない能力だったが。
いや、ある意味では役立つものだが。つまり、自分がいかに無力か、思い知りたいときに。
死の香り。
それが漂う人間は、死ぬ。
それは絶対的なことだった。例えそれがわかるオレがなにをしようと、絶対にそれは変わらない。
オレは、わかるだけ。
どうしようもない。
ただ、自分が巻き込まれないようにその場を離れることしかできなかった。
No597-05/24 12:02
男/ジョン
SN39-w3eA/Lkv
一口、コーヒーをすする。
口の中に香ばしい苦味が広がる。
黒い液体にはどこか人事の様な僕が写っている。 それを何故か不思議だと思った。
「どうですかね? 今日は豆を変えてみたんですが。」
店のマスターが問う。
悪くはない。 むしろ心地よい苦味にゆっくりと広がる香りは、覚醒を待つ朝の意識には贅沢すぎる代物だ。
僕はもう一口、コーヒーをすする。
「気に入って頂けた様ですね。 良かった。」
人の良さそうなマスターが呟く。
その顔はすこし美しく見えた。



店を出ると夏に向かう日差しが強く、起きたての身体には少しキツイ。 けれど口の中に残る最高のコーヒーの後味が、僕を今日も日常へと奮い立たす。

今日は良い日になりそうだ。
鼻をくすぐる香ばしい香りを意識しつつ、僕は今日を歩きだした。



駄文、申し訳ないです。
次は【香り】でお願いします。
No596-05/24 09:53
男/白い梟
811SH-VsNpRZXX
目玉焼きを焼く。トーストは二枚、オーブントースターに入っている。冷蔵庫にはサラダがはいっている。あとはコーヒーメーカーがコーヒーを沸かせば、朝食が出来上がる。
「おはよう」
私が朝食を調理していると、彼が起きてきて私にそう言った。
「おはようございます」
私は均等に火を通し終えた卵をレタスとトマトを添えた皿に移し、トーストの香ばしく焦がされた表面にバターを塗りながら彼のほうをむいた。
コーヒーメーカーが音をたてた。部屋にコーヒーの香りが充満する。

確実にあの人のあの短編の世界です。もう二次創作とすら言えるかも……(^-^;
『コーヒー』で
No595-05/23 23:37
女/たんぽぽ
TS39-5kiOC.SB
ネコ耳の男を見た。
スクランブル交差点の真ん中で空を見てる。
人々は皆、彼を異質な者のように見ながらよけていた。
歩道にいた私は、彼が何を見ているのかと、その頭上の空に目をやった。
途端、何かがキラリと光る。
思わず目をつぶった瞬間、けたたましいクラクションが聞こえた。
見ると、信号は青になっている。
それでも彼は動かない。
痺れを切らしたのか気付いていなかったのか、赤い車が彼に突っ込んで行くのが見えた。
道にいた人々は皆目をつぶる。
叫び声も聞こえた。
そして2秒後、私は目を開けた。
───いない?
そこにはネコ耳の男はおらず、驚きに固まった人々がいただけだった。

それから5日後。
『地球外に生命の住む星が発見されました。その星からは時折、何らかの光線が太陽系に向かって発せられている模様です。……』
アナウンサーの声と共に映し出された映像にはネコ耳の男が数人映っていたが、私は朝食の目玉焼きに夢中でちっとも気付かなかった。

次は『目玉焼き』でお願いします。
No594-05/23 21:22
男/猫は天敵白い梟
811SH-sNFFmA8X
『家族? よく言うよ。一日中家のなかに閉じ込めて、ちっとも帰ってきやしねえ。オレがてめえのいない間、なにやってるか知ってンのか!
……そうだよ。それ、商店街で万引きしてきたんだ。悪いかよ! もう食っちまったぜ!
なんだよ! 叱れよな! お前が、いつもそうやって甘やかすから! オレは……、オレは……!』

「ただいまミィちゃん。あれ、この魚の骨、また商店街の魚屋さんでもらったのね。ダメじゃないもう。
ほら、ミィちゃんの好きなキャットフードよ」
「ニャー」

キャット、もしくは猫で。
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