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No14-2009/11/07 20:31
フロムポスト(CA38)
盗み見る、という事が彼女は実に下手だった。
次のページを開き、彼女は笑う。
しかしその前に彼女は必ずぼくの顔をちらりと一瞥する。
それに気付かない、という事の方が難しいように思えた。
どこかで見覚えのある外国製の
人形に似た瞳が素敵さ
ふと、ピロウズの「彼女は今日、」の一節が頭をよぎった。
「ねえ、次のページ」
と彼女が言うので、ぼくはそれに従う。
そして彼女がぼくの顔を盗み見るのに合わせて、ぼくはわざと彼女の瞳を見た。
彼女は一瞬呆けたが、何かを取り繕うように、照れくさそうに笑った。
ぼくは笑わなかった。
笑えなかったのだ。
だって「彼女は今日、」のラストは確か…。
彼女が心配している。
ねえ、どうしたの?どうしたの?
何度もそう訊く彼女をぼくは無言で抱き締めた。
腕の中に居る彼女の体温を、ぼくは確かに感じている。
その体温が感じられなくなるいつかが来る事をぼくは思った。
それは、決してしてはいけない想像で、けれど、酷く現実味のある想像で、彼女を抱き締めながら、ぼくは泣いた。
彼女の体温と、ぼくの涙。
一体どちらの方が暖かいのだろう。
No13-2009/11/07 13:44
髭(SN3K)
幸せな気分になる。当然だ。彼が隣にいるのだから。
正直、漫画の内容なんか頭に入ってない。入るはずもない。高揚と鎮静を繰り返す私の心に、そんな余裕は微塵も無いのだ。
「次のページ」って言ってた私の声は上ずってなかったかな、なんて事を考えてたら、彼が「まだ?」って言った。
「まだ読んでるの?」
私と彼の距離。それは私が考えていたよりずっと親密で暖かかった。私が張り切って化粧したりだとか、可愛い服を選んだりしてたあの頃を思い出そうとして可笑しくなる。そんなことしなくっても、彼は私を見てくれてるのに。
「ねぇ、見開きのページ5分も見てて楽しい?」
彼が言う。彼の微笑む様な笑顔が、私は好きだった。
「楽しいよ。うん、スッゴい楽しい。可笑し過ぎてお腹よじれそう!!」
「僕は君を見てる方が、よっぽど可笑しいけどね」
私が全力で無理をしないこと。この全力で、って所が大事。それが私が恋人と築く関係ってやつで、それが一番幸せってやつ。
彼がおんなじ気持ちなら嬉しいな。
そんな事を思いながら、ページを見るふりして彼の顔を盗み見るのであった。
次、「盗み見る」で。
No12-2009/11/07 03:04
フロムポスト(CA38)
次は「幸せな気分になる」でお願いします。
No11-2009/11/07 03:03
フロムポスト(CA38)
次のページへ捲ろうとした時だった。
「待って、まだ読んでる」
ぼくの手を彼女の声が制した。
月曜日よりの使者、とぼくらが呼んでいるその週刊漫画雑誌を一緒に読む事は、ぼくらの間で週に一度の習慣になっている。
当初はジャンケンをして勝った方が先に読む権利を与えられていたが、ぼくが勝つと彼女があまりに悔しそうな顔をするので、ぼくの方がそれに耐えかねて、「じゃあ、一緒に読もうか」と言ったのがきっかけだ。
今読んでいるのは、下ネタ全開のギャグ人情漫画。
あはは、と彼女はそのギャグ人情漫画の一台詞に笑う。
いつからだろう。とぼくは思う。
付き合った当初は、お互いに気を使ってばかりだった。
ちょっとお茶をした時でさえ必ず彼女は割り勘を指定したし、デートの度に彼女は毎回髪を本当に綺麗にセットして来た。
それが今はぼくの横で、スウェットを着て、下ネタで笑っている。
その距離感を、ぼくは決して残念だとは思わない。
ぎこちなく、しかし確実にお互いの本心をごまかしていた頃に比べれば、それはとても幸せな事だ。
「はい、次のページ」
彼女の声で、ぼくはそれに従う。
このページで彼女はどんな風に笑うのだろう。
それを想像して、ぼくは幸せな気分になる。
No10-2009/10/10 00:27
桜井(822P)
報われる日を夢見て書き連ねた言葉の数々を、振り返って、ただ汚したにすぎないと知る。白かったはずのページはいつの間にか思い出したくもない記憶で埋まってしまった。なんにもならない。意味なんてない。もはや形すら、成さない。
けれど書きなぐったこの凡庸でくだらない物語を、決して幸せな結末を見ない人生を、けれど、けれど、もう戻ればしないのだから。
前を見る。なるたけ遠く、高くを見る。それが報われない道と知って、それでも、次のページへ。
『次のページへ』で^^
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