PiPi's World 投稿小説
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No734-11/30 22:43
コルト(V903SH)
「頭打った……っう」
 長さ5mの煙突をピンボールのように、壁に当たりながら落下していった彼女は、頭を抱えて呟いた。
「う……、と、とりあえず仕事をしなくちゃ…」
 もぞもぞと、煙突に挟まっている白い袋を引っ張りだす。
「ご……強盗だ!!」
「……はひ?」
 刹那、フライパンやら包丁やらが、彼女目掛けて目一杯飛んでくる。
「わ、私はただプレゼントを届けに!!」
「煙突から不審者が落ちてきたぞ!!」
「わ、や、おじゃましました!!」
 素早い身のこなしで、一目散に家から脱出する。
 しばらくの間、物は飛んで来たが200m程走った後、ようやく逃げ切ることが出来た。


「私はサンタクロース……子供に夢を与える仕事……」
 ぼそっ、と呟く。
「だけど…強盗だと間違えられるし…」
「っていうか、12月じゃないし……」
 愚痴りながらも、愛するペット、トナカイにエサを与える。
「ノルマ達成なんて無理だよー―――――!!!!!!!!!」

まだ一つも減っていないプレゼントを見て、彼女は寒空に叫びをあげた。



【ノルマ】で!
只今暇潰しに書いてる短編の一部。
サンタクロースは親だなんて小さな子供にはいっちゃダメです。
しかし文章力が向上しないorz
No733-11/30 14:14
クレイモア(HI37)
…何故停電になったのだろうか。
やはり、病人を気遣ったとはいえ、ストーブを点けた上に加湿器をオンにして、簡単な病人食でも作ろうと思って電子レンジなどを使っていたのがいけなかったのか。
それとも、「今日は雷雨が発生する」と言っていたから、電力関係の所に雷でも落ちたのだろうか。

――それはともかく。

彼を悩ませるのは、寝床で苦しそうにしている彼女の存在。
蛍光灯の明かりの中では単なる病人に見えたが、停電になって月明かりに照らされると、その様子は様変わり。
薄闇の中、なんとか見える顔は上気していて、何だか色っぽい。もぞもぞと動く布団に、喘ぎにも聞こえるうめき声が、変に組み合わさり、言いようのない艶めかしさを漂わせる。更に、しきりに呟かれる自分の名が、イケナイ妄想を否が応でもかき立てる。

「やべぇ……これじゃ、病人相手に盛っちまうじゃねぇか…」

彼は頭を抱えた。


……「社外情事?」、絶賛投稿中です(宣伝すいません)。次は、「頭」で。
No732-11/27 12:11
久遠(HI38)
目の前には目玉が丸ごと二つ乗った皿が一枚。
薄暗い部屋の中で、俺はため息をつく。
唯一の灯りである、妖しく揺れる蝋燭の火が、長い前髪で目が隠れている女の顔を照らし出した。
女の口が微かに開き、俺に言う。


「さあ…食べなさい……」


「こんなもん食えるかあ!!」
俺は皿を指差して言った。
「あら、マグロの目玉はDHAが豊富で、食べると頭が良くなるのよ。もうすぐテストなんだからちゃんと食べなさい」
「だからって何で調理もせずに丸ごと食わなきゃダメなんだよ!!」
「急な停電で、何にも出来ないんだからしょうがないじゃない!!」



次は『停電』で。
No731-11/24 14:30
白いフクロウ(811SH)
愛してる
   の
    よ
   あ
   なたを
      だ
     か
    ら
  たわ
 し
  にちょうだいあ
         な
        た
         の
          その

両の目玉を



『目玉』で。
思いついてやってみたけれどこれは邪道な文の書き方だな。
No730-11/23 02:05
ジョン(SN39)
子供みたいなその声で叫んだ後に、君は必ず泣いた。練習中だろうと、ライブの最中であろうと、君は決まって周りを心配させる程の涙を流した。
その嗚咽の混じった聖母の様な美しい声色を聴いた者は、全ての者が千鶴の世界に引き込まれた。
僕らにとって、それは大いなる武器であったし、魅力であった事は間違い無い。 確かに、“何かを引き寄せる力”持った千鶴の泣声は、オーディエンスを沸かせる。
だけど、観客が『泣き声』を求める度に僕の心は針で刺された様に痛み、腹の底の方で重く重く重量を増していく。
――無理だよ。だって僕は、千鶴の才能に嫉妬しているんだもの――
愛を告白する千鶴に、僕はそう言った。
腸が煮える変な感覚が、演奏中に襲いかかる。
僕は、止めてくれと叫ばんばかりに、ベースを鳴らしたくった。
暴走した僕のベースに、ギターの音と、ドラムの音が重なり合い、素敵な不協和音を成らす。
千鶴はまた、嗚咽を耐えながら声をはる。

さぁ最後のライブだ。
僕は千鶴をチラリと盗み見た。
彼女は唄う前から、泣いていた。
ラストフレーズ。
彼女は精一杯の力を、心を、全てを唄に込め、叫ぶ。

『君が隣にいるこの瞬間に私は ただ叫ぶよ 愛してるって――』
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