PiPi's World 投稿小説
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No758-02/24 16:21
ミラージュ(KC3A)
湯気のように姿が透けていた。ただの面白半分で、不安がる友達と幽霊スポットの灯台に来ただけだった。
姿を見え隠れし、それは語りかけてくる。
「寂しいかったわ…本当に。ずっと…私は一人だった」
私はただ友達の手を引き、がむしゃらに走る。
「私はね。昔、ここで死んだの…いえ、殺された」
幽霊は変わらず語る。その声は穏やかだった。
「私は親に捨てられた…まだ子どもの頃…」
逃げるが逃げきれない。振り返れば、必ずそれはいた。
「自分勝手な親…いらないから捨てる…まるでゴミみたいにね…」
私の心は恐怖で一杯だった。だから、気付かなかった。
「でもね、もうそんなことはいいの…本当にね…」
出口が見えた。私は唯一の希望に走り込む。


眼前に広がるのは真っ黒な海だった。
「灯台の一番上よ…いい景色でしょ?」
その時、やっと気付いた。
「でも私はあまり好きじゃない……ここから私は海に捨てられたんですもの…」
微笑むそれは、手を引いていた友達に重なっていることに。
「一緒に飛びおりてくれたら、この場所も好きになれるわ…」
友達の声とそれの声が重なった声だった。

――灯台から何かが落ち、海に波紋をつくった。


次は「波紋」で
No757-02/24 10:59
フロムポスト(CA38)
ーーの高校生、幽霊スポットの灯台から自殺ーー

「自殺ねぇ…まだ若いのに」
彼女はそう呟いた。
アナウンサーは無機質な声で、今日も死亡者の名を告げてくる。
それにオレ達は何の疑問も感じなかった。
いつまでだっただろう、赤の他人が死んだ事にも悲しみを感じる事ができたのは。
思い返してみたが、まったく分からない。
オレのカップからはコーヒーが、彼女のカップからは紅茶が、それぞれに湯気をたてている。
ただそれだけの事に奇妙な安心感を覚えた。
「…ねえ」
彼女は紅茶の湯気越しにオレの目を見た。
「私が一緒に死のうって言ったら、一緒に死んでくれる?」
「……」
「答えて」
「もちろん」
「本当にぃ?」
「本当に」
「ふ〜ん」
突拍子のないヤツだった、同じ位、感嘆もないやつだった。
「じゃあさ」
「ん?」
「私もあなたが死ぬ時は一緒に死んであげるよ」
「あ〜…それはいい」
「なんでよ?」
「オレは死なんから」
「…」
「ここにはお前居るし」
「…ふ〜ん」
もう充分だと思った。
要するに、彼女もオレも寂しがり屋なのだろう。
だから、もう充分だ。
二つのカップから、もう湯気は上がっていない。
しかしオレの奇妙な安心感はいつまでも無くならなかった。

「湯気」でよろしくお願いします。
No754-02/24 09:19
ミラージュ(KC3A)
灯台。
それは真っ黒な外観をし、闇と同化して存在していた。
「本当に…入るの?」
「当たりまえじゃん」
私の不安をよそに友達は行く気満々だった。
黒く汚れ、灯台の機能さえもしないことから幽霊スポットの一つだった。
――アァァァァァ
風が吹き荒れ、悲鳴のような声が聞こえる。私は友達に寄り添う。
「なに…これ?」
「ただの風の音よ。ほらいくよ」
さっさと行く友達の背中を追いかける。
私がさっき聞いたのは悲鳴のような声は、ではなかった。
入り口に近づくにつれ、さらに感じる。
「風が…灯台に…吸い込まれてる?」
私は無意識に呟く。
風は灯台の入り口に向かっていた。
それはまるで私たちを二度と帰さないように。
私は思わず息をのみ、友達の後を追った。


数日後の新聞。
片隅にあることが載った。


――二人の高校生、幽霊スポットの灯台から自殺。


次は「自殺」で。

>750 感想、ありがと。
No752-02/24 00:10
白いフクロウ(V705SH)
 ――まさか――
 その考えに至ったとき、黒雄の顔は驚愕に歪んだ。
 そう、全くありえないことではない。可能性として、それは零パーセントではない。しかし――
 「……有り得ない……」
 思わず口に出していた。
 とても実行可能とは思えない、突拍子もないトリック。しかし、黒雄の気付いた微かな違和感から導き出される可能性は、まさしくそれを示していた。
 そして、同時に思い至る。
 「……犯人は、あいつだ……」
 いまだおさまらない嵐のなか、窓の外に光る雷光が、灯を失った部屋の闇を掃っていた。


『灯』で
No750-02/23 18:20
リンク(P902iS)
>749より

呟くような、囁くような詠唱が続いていた。どこの国の言葉か判然としない…否、そもそも言葉と呼んでいいものなのかさえ分からない。

バガビ・ラカ・バガベ・カヒ・アカバベ・カルレリオス…

ラマク・ラメク・バカリアス・エト・ファミオラス・ハルラヒヤ…

跫音を殺し、息を潜め、僕は『その部屋』に近付いた。締め切られた扉の隙間からは微かな灯りが洩れている。ゆっくりと時間をかけて扉の前に辿り着く、そっと耳を押し当てた。室内の声が聞こえてくる。

?一人ではない…?

あの客、今夜の内に。
そうだな、朝が来る前には。

…今夜の内に…?一体、どうしようと言うんだ…?

不穏な雰囲気を感じ取った僕の背に、冷たい汗が湧いた。

まさか…。



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いやぁ…>749、少し目頭が熱くなりました(^^;ゞ
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