PiPi's World 投稿小説
[編集|削除|古順]
[戻る|前頁|次頁]

No833-05/08 14:51
ソックスザウルス(CA34)
『かもしれない運転』
ホワイトボードにはそう書かれていた。
「車は便利な道具です。
しかし使い方を誤れば人などを簡単に殺してしまう危険な道具であることは入校時から何度も説明しています。
ですから皆さんにはこの『かもしれない運転』を覚えて欲しいのです。」
角から車が出てくる〈かもしれない〉
車の陰から子供が飛び出してくる〈かもしれない〉
この直線道路は緩やかな勾配〈かもしれない〉
自分の運転で人を傷付ける〈かもしれない〉
「などなど色々な〈かもしれない〉があります。
宿題として次回の講義まで皆さんの〈かもしれない〉を3つ書いてきてください」

「教習所によって色んな運転があるんだな」
「ああ」
「お前さん、さっきから黙々と書いてるがもうできたのか」
「ああ。読むか?」
「サンキュ〜何々?
擦った〈かもしれない〉
乗り上げた〈かもしれない〉
はねた〈かもしれない〉…
っておよしなさい」


と言うわけで次は『およしなさい』です。
皆さんはキチンとした〈かもしれない〉で安全運転を心掛けてください。
No832-05/08 11:08
白いフクロウ(812SH)
 「だろう運転」はしてはいけない、と教習所の教官は口を酸っぱくして言っていた。
 右折時、対向車は一時停止してくれる「だろう」。 車間距離空けなくても急ブレーキかけたりしない「だろう」。 信号は赤だから歩行者が飛び出したりしない「だろう」――思い込みで運転する「だろう運転」は、非常に危険だ、と。
 そんな教官が、今日交通事故で死んだ。
 一時停止のところをノンブレーキで突っ込み、慌てて横から来た車を避けようとして建物に激突したそうだ。
 通夜の席でも人々は「なぜ」と囁きあった。ストレスとか、飲酒運転とか憶測しあっている。
 俺は元教え子という立場で仏壇に手を合わせ――ニヤリと笑った。
 受講生に恨まれてなどいない「だろう」。ブレーキオイルを故意に抜かれてなどいない「だろう」――。
 それが、あんたが俺を何度も殴ってまで禁じていた「だろう運転」じゃないのか?
 内心の笑みを隠し、鎮痛な面持ちで頭を下げ、俺は通夜の席を後にした。
 免許証は持っているが、徒歩で帰る。なにしろ、俺の愛車のブレーキオイルも抜かれている……「かもしれない」のだから。


『かもしれない』で
『〜かもしれない』でもいいです
No831-05/08 03:25
夢(810SH)
(れっと)⇒劣等感を抱いた私。
優越感を覚えたあの子。

2年前…私の旦那は浮気をしていた。知ってたけど何も言えない…だって、今の家庭を壊したくないから。


好きだから許せる…
子供がいるからしょうがない。
でも…喧嘩になるといつもこの事を口にしてしまう。
「あの子わいいよね。あなたにあんなにしてもらえて。私はどうせ子供を産むための道具にすぎないのよ。」

「馬鹿な事ばかりいって…子供の前だぞ。」

いつもこれだ…自分の立場が悪くなると子供を使う。


私わこれから先もあの子に劣った生活をして…劣等感を感じて生きていく。

あの子わこれから先…優越感に浸って裕福な生活をして生きていくだろう。

続き《だろう》
No830-05/07 23:43
リンク(P905i)
>829より

かったりィ…と欠伸混じりに呟く。連休明けの初日。休みの間はご機嫌な曇りや雨が続いていたくせに、仕事の日となったら憎らしいくらいの晴天。俺は軽く舌打ちし、苦笑いして歩き出した。何にせよ、早いトコ『仕事モード』に切り替えなくては…。

「お早うございます!連休、どうでした?」

駅を降り、会社に向かって歩いていると、背後から元気な声が呼び掛けてきた。後輩の俊介だ。
「オゥ、お早う…。休み中は天気が悪くてさ…。ゴロゴロしてた。お前は?何処かへ行った?」
俺達は並んで歩きながら、言葉を交わした。
「僕ですか?ちょっと海外へ、ね」
「へぇ…そりゃ結構でございますね。何か土産はないのかよ?」
「ありますよ。いやね、結構効き目のある護符だって、地元の占い師のバァちゃんが言うんで、先輩に…と思って」
「占い師?護符ぅ…?お前、何処に行ったの?」
「いや、ちょっと南の島に…。そこの土産物屋に、シャーマンだっていうバァちゃんがいまして、その店で買ったんです…ホラ」

俊介がカバンをゴソゴソやりながら取り出したのは、小さな銅色の金属板に青く光る石を嵌め込んだ、革紐の付いたアミュレットだった。


Next→『れっと』で☆
No829-04/30 13:32
白いフクロウ(812SH)
 「くれたよね、これ。覚えてる?」
 彼女はそれをぼくに見せた。
 「ああ、まだ持ってたんだ」
 「捨てらんないよ。思い出だもん」
 そう言って曖昧に笑う彼女。その表情に、あのころにはなかった憂いを感じて、ぼくはなぜだか寂しくなった。
 「懐かしいね……」
 彼女の手の中のそれは、オレンジ色の夕日に照らされて懐古を煽る。そのむこうにあのころの風景を見た気がして、胸が熱くなった。
 ふと彼女がぼくの顔を見た。
 「なに泣いてんの?」
 「え?」
 言われてはじめて、自分が涙を流してることに気がつく。
 「わっ、な、なんで」
 「あはは。ヘンなヤツ」
 止めようとしても流れる涙をなんとかしようと焦るうち、いつの間にかぼくはしゃがみこんでいた。
 「ごめっ。ちょ、気にしんで……。すぐにっ、泣き止むからっ」
 彼女はそっとぼくの頭を撫でた。
 そのとき、しゃがんでいるぼくの頭に水滴が落ちる感触がした。
 雨、じゃない。
 「いいよ……泣こうよ……。たまには、ね……」
 ぼくらは長い間、そこから動かなかった。



指定なし
<戻る|前頁|次頁>