PiPi's World 投稿小説
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No884-08/04 06:05
ケンサク(TS3D)
「世界の人間が俺達だけだったらどうなってたかな」
食後のデザートを頬張る椿ちゃんにそんな質問をしてみた。
「あたし達二人だけ?」
スプーンを咥えたまま首をかしげる。
「そう、それも最初からね」
そう付け足すと、更にうーんと唸って言った。
「好きにはなんないんじゃない?」
「…」
予想外。
もうちょっと甘い答えを期待したのに。
「だって二人だけでしょ?それも何年も。そうなるとキスもエッチも何の愛情もなさそうじゃない。お互いが性欲処理する道具みたいな」
俺はそんな事ないぞ。
周りに人がいようがいまいが椿ちゃんだけを愛して―…
「やっぱり比較級は必要だと思うのね」
「比較級?」
「周りと比べて優越感に浸るのが好きなの」
「何それ」
さっきの回答が正直期待外れだったから、つい語尾を強めてしまう。でも、
「顔も声も性格も、ちくんが一番好き」

結婚式前夜、最高に甘いプレゼントをもらった。



『もらった』でお願いします。
No883-08/01 15:13
麻元 友(D904i)
「楽になりたい、とか楽観的がいい、とか本気で思ってるのかしら?」
彼女が。
彼女は言う。
「まぁ、そうだけど」
「それは諦めてるだけよ」
ぴしゃり、と。
声だけでなく雰囲気も厳しくなる。
「いい? 諦めてしまったらそれで終わりなの。結局そこまでしか見ることはできない」
「……」
「新しい景色が見たいなら、色んな意味で諦めちゃ駄目。諦めなければ今までにない新しい世界が広がるわ」
「そういうもんですか」
「ええ。世界なんてそういうものなのよ」



リハビリ的に投下。
なまってるなぁ…。
次は「世界」でお願いします。
No882-07/27 23:57
TALE(D800iDS)
>881より

「どんな顔をするだろうって、いきなり頭突きしてくる奴があるかよ!」「ここにいる。こちらとしても甚大な被害を受けたが、なかなか楽しめた」
「俺は楽しめてねぇよ!」
「じゃあ噛みしめろ。痛みを」
「何で上から目線なんだよ? 普通まず謝るだろ!」
「俺に常識など通用しない。ごめん!」
「普通に謝ってんじゃねーか!」
「何が望みだ。謝れと言ったり謝るなと言ったり」
「いや謝るなとは言ってねーよ!」
「まず落ち着け。さっきから感嘆符ばかりで疲れる」
「お前が原因だろうが!」
「しょうがねぇだろ。俺迎撃ミサイルなんだから」



>戦争なくなれば良いですねーと無責任な事を言いつつ、お次は『ら』でお願いします。
No881-07/24 22:11
フロムポスト(CA38)
いきなりぼくの前にタバコをくわえた顔を突き出して、火ちょうだい、なんて言うものだから、ぼくはポケットからライターを取り出して、彼女の顔の前で火を付けた。
しかし彼女は違う違うと首を振ると、ぼくのくわえる火のついたタバコと、自分の火のついていないタバコを交互に指刺して、笑った。
その仕草の意味を理解し、ぼくも少しだけ顔を突き出すと、彼女もぼくに再び顔を近づけて、ぼくのタバコの先端から自分のタバコに火を貰い受け、フー、と最初の一口を細く吐き出した。
何の事はない、ただの異性の友達。
彼女はその一線を時々面白半分でつついてくる。
最初はそれに少しドキドキとしていたものの、それも何度か続けば次第に慣れてしまうもので、ぼくは溜め息の変わりにタバコの煙を吐き出した。
生ぬるい湯のような、ぐだぐだとした時間。
だがそれがどんな難病にも効く薬のように思えてしまう。
ぼくのタバコが燃え尽きた後、初めてぼくも少し線をつついてみよう。
彼女はその時、どんな顔をするだろう。

「どんな顔をするだろう」でお願いします。
No880-07/24 01:35
白いフクロウ(812SH)
 必ず死ぬ。
 人とはそういうものだ。
 交差点。赤信号。
 いかに生きようが、人は死ぬ。
 金持ちも死ぬ。
 貧乏人も死ぬ。
 私の前には、信号待ちのサラリーマン。
 生きることになにがある?
 死ぬことは安らぎだろう?
 トラック。バイク。走り抜ける車たち。
 生きることは苦しみ。
 悩み、挫折し、悔やみ、憎む。
 考えることは辛さを産む。
 考えることはつまり苦しみ。
 男の無防備な背中。一歩先の死。
 思考を止める。
 安らぎを得る。
 生きていてなんになる?
 サラリーマンは、私に気付かない。
 彼の生に幸福はない。
 私の生に幸福がないように。
 私の両手が、彼の背に伸びる。
 一歩先の死。
 あと一押しの死。
 あなたも、生きるのが辛いはず。
 安らぎを。
 力が伝わり、バランスが崩れる。
 車の前に踊りでるサラリーマン。悲鳴。
 血。
 さようなら。
 おやすみなさい。
 ごゆっくり。
 見上げると、青ざめている私の母。
 彼女の胸の中に抱かれる私。
 泣き声をあげてやる。
 憂い。



『い』の一文字で
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