PiPi's World 投稿小説
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No900-09/02 17:26
螺旋(N902iX)
「時間が無い! 早くしろ、疾風! その刀でオレごと刺せ!」

何を躊躇ってるんだ、あのバカは!

「出来ない。ボクには出来ないよ。キミはボクにとってたった一人の親友だ! だから、キミを刺すなんて出来ない」

刀は力の行方を失い地面に落ちた。

「バッカヤロウ! これはお前にしか出来ないんだ! オレはお前になら、命を預けられる! だから、早くしろ、疾風!」

大したことは言ってない。ただ、疾風のことを信頼している。それだけを伝えたかった。

疾風にとって晃人が自分を信頼してくれたことが何より嬉しかった。だからこそ晃人の言葉にすべてを賭けることにした。

疾風は再び刀を手にした。今までの顔つきとは違う。心無しか刀も以前よりも輝きが増しているようにも思える。

それをおもいっきり奴と晃人の身体に刺した。二人分の肉を斬る感覚。二人分の血が流れる感覚。二人分の身体を打ち砕く感覚。

何度刀から手を離したい。と思ったことか。だが、その度に晃人が振り絞りながら言葉を掛けてくれた。

『頑張った……な、疾風。もう少しだから……よ、頑張れ……、疾風』

久しぶりに書いてみました。うーん、ブランクを感じる。

次は『頑張れ』か『疾風』で!
No899-08/28 04:53
Dyuo(CA37)
歌声が、白い部屋にこだまする。
絶望的なこの空間でさえ、その歌は、未だ輝きを失わないままでいる。

「歌えなくなるくらいなら、声なんていらない。命だっていらない」
彼女の口癖だった。
本当は言葉を発するのだってツラいくせに、平気なフリをして、日がな俺に歌って聴かせた。

業界の最前線で、大観衆を魅了し続けた彼女はどんなだったのだろう?
目の前にいる彼女の、少し前までの姿を俺は知らない。
ただ、目を閉じてその歌声を聴いていると、沢山のファンに囲まれる彼女の姿が容易に想像出来た。

俺の言葉は残酷だろうか?
生きていて欲しいと、願うことは無責任だろうか?
最近ずっと、迷いが抜けない。
もう、あまり時間が無いというのに……


お久しぶりです。
次は『時間が無い』でお願いします。
No898-08/27 20:31
コルト(TS3H)
虫けらなじる
弱者は潰す
どうやって殺そー
どうやって殺そー
抉るも斬るも
捻るも焼くも
どうやって殺そー
どうやって殺そー

どうやっ……

 歌は途中で途切れた。
 それとほぼ同時に氷に漬けられたかのような悪寒が僕の全身を包み込む。
 息が上がる。
 心臓が爆音を立てる。

見ィつけた

 ダメだ逃げなきゃ
 ダメだ逃げなきゃ
 あいつにだけは!
 あいつに……

どーうやーって殺そー
どーうやーって殺そー

 楽しそうな歌声だけが、夜の東京に響いていた。



「歌」で
No897-08/18 04:34
白いフクロウ(812SH)
 甘い……!
 まさに虫! 生き残る方法を、こんなにはっきり明確にしてあるのに!
 考えもせず……覚悟も決めず……蠢くだけ! 虫! 虫! 虫けら!
 ククククククッ! だから死ぬ!
 虫だから死ぬのだ!
 なぜわからん……? 死なぬ程度の電流など、本来必要ない……。なぜそのことに気付かん……?
 お前達を殺すだけなら、電流など致死量でよいのだ。……しかし“死なぬ程度”!
 後は明らかではないか……。何故貴様らは、電流の流れる鉄骨を歩いて感電しない……?
 ククククククッ!
 あまつさえ、あの男が参加者同士の物の贈与もアリだと証明しているにも関わらず……!
 考えない……! 考えない……!
 覚悟さえ決めればよい……そんな肚だから死ぬ! だから虫! 考えもせずに気合いだけの覚悟など、無意味! 無意味!
 しね! しね! だから虫! 虫けら! 虫けら! ククククククッ!



『カイジ』の二次創作です。高層鉄骨渡りには作中に言及のない必勝法があります。



 『虫けら』

または

 『虫』

または

 『ククククククッ』

で続けます。
No896-08/18 00:49
フロムポスト(CA38)
「つまりは死にたがっているのね」
自らの言葉に納得するように、彼女は三回頷いた。
「死にたがっている?」
「うん、体に悪い物を自分から体に取り入れるのは、死にたがっているからよ」
彼女はぼくの指の間で燃えるラークを指差してそう言った。
ぼくはそれを聞き流しながら、煙を吸い込み、毒が体中を巡った後、その残りを吐き出した。
彼女の言う事は当たっていたけれど、それを表面に出す程、もう助けを求めてはいない。
「どっちにしろいずれは死ぬ。だったら早めにそれを受け入れる方が、懸命なんじゃないかな?」
「受け入れているの?」
「分からない、あまり考えた事がないよ」
「怖がりさんなのね」
「死を受け入れる事を考えるのが?」
「違う」
彼女は微笑んだ。
少なくとも、ラークに灯された火より、ぼくにとっては眩しかった。
「死を簡単に受け入れる事ができてしまう自分が怖いんでしょ」
どんな答えを返せば良いのか分かりかねて、ぼくは二本目のラークに火をつけた。
新たな毒がぼくの体に入るのを待ちわびていた。
彼らが好きだ。
死に近づけてくれるから。
タバコが好きだ。
ぼくを殺してくれるから。
ガンと脳梗塞という言葉は、ぼくにとってどんな菓子より甘い。

「甘い」で。
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