[
編集|
削除|
古順]
[
戻る|
前頁|
次頁]
No905-09/27 01:20
竹野きひめ(CA38)
「焦るなんて、バカね」
部屋中に広がる淹れたてのコーヒーの香り。
姉さんは相変わらずパーマがとれかかった長い髪を一つに後ろで束ねて、小学生の頃から使ってるうさぎのマグカップにコーヒーを注いだ。
私には客用の洒落たカップ。
「それで母さんには言ったの?」
姉さんが向かいに座り首を傾げる。
カップに目を落として首を振ると頭の斜め上から溜め息が降ってきた。
「まあ、気持ちは分かるけど。でも理由が理由だもの。仕方ないわ」
エプロンのポケットから携帯電話を出して母さんの番号を呼び出して私に差し出す。
あとボタンをひとつ押せば母さんに繋がる。
じっとそれを見たまま手を出せずにいる。姉さんは私の前にそっと置いてマグカップを持ち直し一口飲んだ。
外から風が入りレースのカーテンが揺れた。
姉さんがその揺れてるカーテンを頬杖をついて見つめて呟く。
「まさか啓太さんがオカマだったなんてねー…」
次は『オカマ』で
No904-09/26 22:50
もち太郎(911T)
「真っ直ぐだ。とりあえず真っ直ぐ進め」
「このあぜ道をか?」
「そうだ」
うなずくヤツから目を離し、夕暮れ時に映えるあぜ道を目を細めて見た。
「真っ直ぐ行ったところで、どうなるんだよ」
「さあな。オレにもわからん」
ヤツは笑った。
「だが、暇潰しにはなるだろう」
「どこかで道が途切れたら、どうすればいいんだ」
「立ち止まって、違う道を探せばいい」
オレを諭すように言う。
「人の生…人生はな、道なんだよ。とりあえず進め、迷ったら立ち止まって探せ。もし道が無くなったら、少しだけ引き返せばいい…」
「何が言いたいんだよ」
「思い通りいかなくても、焦るなってことさ」
しりとり初挑戦
酷過ぎる
次は『焦るな』で
No903-09/09 22:13
春山憩(CA3A)
「秋桜の花言葉って知ってる?」
秋風に揺れる儚げな花びらに触れながら、彼女は呟く。
ーコスモスの?
知らないという顔を返してみせると、彼女はフッと息を吐いた。
花びらがそれに応えるかのように彼女におじぎをする。
…色鮮やかな花たちに囲まれていても、彼女は一際輝いて見えた。
色素の薄い華奢な手で、花の息吹きを摘み取る。
「どうかこれを、」
悲しそうな笑みを浮かべながら、彼女は手を差し出した。
ー今なら、あなたがあの時何て伝えたかったのか分かるよ。
ーあなたはいつだって真っ直ぐだった。
『真っ直ぐ』でお願いします。
No902-09/09 03:47
ソロ(P904i)
目前に迫った決戦日。
わが家は慌ただしい空気に包まれていた。
というのも、その日、父が珍しく日曜休日なのだ。
以前から願っていた日曜休日は、奇しくも来年は進学を控えているという今時期になってやっと叶った。
こうしちゃいられない!
父が前々日の夜中から準備に励む姿は、娘の目から見て頼もしくもあり、照れ臭くもあり。
そんな父を、母は微笑ましく見つめている。
どうやら母は母で、初となる父の参加を喜ばしく思っているようだ。
「父さんはね、ずっと昔、貴女が生まれる前に言っていたのよ。僕の夢は幸せな家庭を築くことです、て。広い大きな家に住んで、一緒にご飯を食べて、一緒に買い物に行って。それで、子供の誕生日や学校の行事には毎回欠かさず参加するんです、てね」
叶わなかったり、叶えられなかったりする中で、それでもこれだけは、この日だけは参加したいと願った行事。
とうとう小学校生活最後となる運動会。
それを聞いた私は、自分の部屋でデジタルカメラとビデオカメラをせっせと準備している父の背に向けて、言う。
「私、お父さんの為にリレー頑張って一等賞になるね」
「おう」という背中が少しだけ震えていた秋の夜。
次は「秋」で
No901-09/08 23:44
リンク(P905i)
>900より
疾風の如く、七つの小さな影が走る。六体は菅笠を被った姿。最後尾を走る一体は…
「まさか…あれは地蔵様…じさまの造った地蔵様!」
一郎太が呻いた。七体目の頭には手拭いが巻いてあるようだった。あの雪の日、小屋の窓から見えた、遠ざかる小さな七つの人影…『福を運んで下さった地蔵様』に相違ない。
「信じられねぇ!何故、あの親切な地蔵様が狼藉を!」
「造り主のご老人が亡くなったからさ」
数珠丸が小声で一郎太に答えた。
「ゴレムは造り主に忠実だ、どんな指示にも従う。ご老人は忌の際に…遺された夫人を護れと、ゴレムに命じたのだ」
だから…ばさまの“あの言葉”を実現すべく、地蔵達は暴走したのか?
「じさま…戻って来ておくれ…」
一郎太は青い顔を数珠丸に向けた。
「だけど、死者を甦らす方法は?どんな命令にも従うったって、いくら何でも…」
そこで一郎太は息を呑む。
「まさか…反魂(はんごん)の術…」
「多分な。ゴレム達は、反魂法に用いる生け贄を捕える気なんだ」
数珠丸は刀を抜いた。
「止むを得ん。不本意だが、ゴレムを斬らねば」
七体のゴレム…地蔵達は、もう目前だった。
Next→『目前』で続きを☆
<
戻る|
前頁|
次頁>