[
編集|
削除|
古順]
[
戻る|
前頁|
次頁]
No984-2009/07/15 13:50
桜井えり(822P)
笑っている。
あの頃の写真の中の私は、いつも笑っている。
なぜって、撮っているのがあなただからだ。
私はあなたに逆らえない。あなたは私をその目で捕らえ、その唇で奪い、その手で囲い、その、あなたのその全てでもって犯す。
あなたが私の全てをうばう。
あなたが私の全てになる。
――笑っている。
あなたが私にそう願ったから。
『……いい子だね、さあ』
(笑って、笑って)
父の瞳に歪んだ愛を勘違いして、そして私は目をそらす。
汚れた昨日から。
見えない明日から。
^^『明日から』でどうでしょう。
No985-2009/07/15 21:54
ソックスザウルス(PC)
明日からは違う部屋で暮らすことになる。
その為には今日中にこの部屋を引き払わないといけない。
けど、
「おら!何漫画読みふけってるんだ!」
ドスッと背中に足の裏が押し付けられた。
「ご、ごめん!」
慌てて漫画を段ボール箱につめなおす。
引越しの手伝いに来てくれた兄に謝りながら荷物を軽トラの荷台に運び込む。
「ん!っと…や!」
荷台に乗せた荷物を押し込むのに苦労していると
「ほらどいて」
兄が僕を押しのけると事も無げに荷物を奥のほうに押し込んだ。
「いや〜、身長があるって便利だな」
兄の身長は僕より30センチほど高かった。
昔から兄弟喧嘩するとチビと罵ら、少しコンプレックスになっていた。
「そうだね座高が高いと特に便利そうだね」
そんな僕でも少しは切り返し方を覚えた。
けど、兄はそんな僕の切り返しを“お前も成長したな”と苦笑いで喜んだ。
お次は“喜んだ”でお願いします。
No986-2009/07/21 03:25
リラ(F704i)
喜んだ。そりゃあもう、喜んだ。皿まで食べかねない勢いだった。
リクエストにお応えして、夫が育てた茄子で作った麻婆茄子は、確かに美味しかった。スーパーで買うものとはたしかに違う、豆板醤に負けないほどに濃い味の茄子。
其の収穫は麻婆茄子だけでは消費しきれず、残りを糠床に漬け、柴漬けに漬け込み、夫れでも余る茄子は明日、焼き茄子の味噌汁にする。
夫は胡麻油を塗って焼いた茄子を実にした、赤味噌の味噌汁が好きなのだ。
食器を片付け終わって、わたしは夫につぶやいた。
おいしいお茄子をありがとう。
夫は幸せそうに微笑んだ。
ああ、わたしの行為は間違いだと自分で気付いている。
夫は是から更に、わたしには目も呉れずに「わたしのために」おいしい野菜を育てるのだろう。
わたしが喜んで料理するからと、わたしの声に気付かない程に菜園へ向かうのだろう。
わたしたちは何処までもすれ違うのだ。
『すれ違う』で
No987-2009/07/30 14:31
フロムポスト(CA38)
ぼくと世界はすれ違っている。
隣り合わせで向かい合っている、しかし流れている方向が真逆で見ている物も違う、何に美しさや醜さを見出すのかが違う、ずれている。ぼくは決して交わる事をしない。できない。
そこにあるそれは、誰もが視認する事ができる、感知する事ができる、遠い未来にある自らの終着点、それを見つめる事を特に怖いと思わない人種、それが当たり前だと思えてしまう人種。
終着点に腕を伸ばし、指で掴み、それを手の平で転がして、さてそれをいつ飲み込もうかと考えている。
ここは暗い。
闇の裏に光がある、だからここのすぐ反対側は光で溢れている。ぼくはそれを知っている。時折、暖かさと光はぼくの居る所にも漏れてくる。同じ量の冷たさと闇があちら側にも漏れだしていく。
ぼくはただ分からない。反対側への行き方が分からない、行けたとして、何と出会えばいいのか、その出会った何かに、どんな手でそれに触れればいいのか、分からない。
ぼくは世界とすれ違っている。
遠い遠い過去、全ての原点、芽吹く前の種を構成する圧倒的な成分。
ぼくは確かに間違えた。
すれ違った世界が微かに笑っていた。
中途半端な暗闇の中で、ぼくはそれに小さく手を振って、彼から離れた。
No988-2009/07/30 14:32
フロムポスト(CA38)
次は『離れた』でお願いします。
<
編集|
戻る|
前頁|
次頁>