PiPi's World 投稿小説
雑談BBS

No870-07/12 17:31
女/凪
912SH-s0Z80kwI
 かじったドーナツを皿に戻し、きみは

「やっぱりいらない……」

 と遠慮がちに言って俯いた。
 そして、

「……口つけておいてごめんね。気持ちだけ、受け取っておく……」

 と、対面するぼくの顔色を伺いながら小さい声で付け足した。
 その様子に、ぼくは無性に腹が立ったんだ。

 きっと、いつもこうなんだろう。

 言いたいことを飲み込み、自分を消して相手にあわせてるんだ。

「食べたければ食べればいいじゃないか! きみはちっとも太ってなんかいないよ! ダイエットなんて必要ない。あいつはただきみを罵倒したくてチビデブブスと言っているだけなんだ!」


 感情にまかせて叫ぶように言ったぼくを、きみは目を見開いて見つめてきた。

 そして、なにか言いたげに口をパクパク動かしたあと、ふいにまた顔を伏せて大きくため息をついた。


「……ブス? はじめて言われた……」


 一瞬、なにを言っているのかわからなかった。

「………は? あ、いや、ち、ちがッ」

 しまった!
 ぼくはとんでもないことを言ってしまった!


*Next「しまった」で
[この辺りへ]