妹(スール)は男の娘!? 1
「ごきげんよう」
「ごきげんよう」
ここは私立鳳桜女学園。
いまどき珍しい?温室育ちのお嬢様を世に送り出す花園である…
…どうも、小野寺翼です。
この春からその鳳桜女学園高等部に通うことになりました。
入学してからもうすぐ一月ですが、その…未だに非常に不安なのです。
…なぜかって?
…その、わた…ってか、俺、男なんです…
そもそも、どうしてこうなったのか。
すべての元凶は、俺の幼馴染にしてこの鳳桜女学園理事長の孫娘・園田歩のせい…かもしれません…
俺と歩は家が隣同士。
お互い家族ぐるみの付き合いで、幼稚園の頃から常に一緒だった。
状況が変わったのは中学生の時。
俺の親父が仕事帰りに交通事故で亡くなったのをきっかけに周りの状況が急変する。
親父の死から一月くらい経つと、俺の母親が度々家を空けるようになった。
日常生活を送れる程度の家事が出来たから当初はさして問題にしなかったが、そのうち母親はいなくなる日が多くなり、ひどいと一月丸々帰ってこないこともあった。
…そしてそのうち、母親は二度と帰ってこなくなる。
おそらく別に男が出来たのだろう。そして俺を捨てて逃げたのだと。
それから俺は歩の家で暮らすことになった。
進学する高校を決める段階になったとき、歩の祖母で鳳桜女学園理事長の園田律子が、俺と歩を呼び出した。
その話とは、もちろん進路のこと。
今までずっと一緒に来たのだから、出来れば同じ高校に進みたいと思っていた。
それは歩も同じだったはずだ。
「進学する高校だけど、歩、鳳桜に行きなさい」
「ええっ!?」
俺はもちろん、歩も驚いた。
私立お嬢様学園の理事長を祖母に持つ歩だが、それまでは一線をかくすように公立の小・中学校に通っていた。
それはひとえに俺の存在…のはずだ。
「おばあちゃん…それはいいけど…翼は」
「もちろん、翼も一緒に鳳桜に行くのだよ」
「えっ?」
鳳桜は女子高だろう。孫娘の幼馴染を通わせるために男女共学にするつもりか?
「どうやって俺を鳳桜に…」
「それは決まってるでしょうが」
ニヤリと笑う理事長・律子…嫌な予感しかしない。
「翼なら大丈夫だと、私は見てるわよ」
「な、何がだよ、ばあちゃん」
俺の顔をまじまじと眺めるその表情に、不安を覚える。
「体格、容姿ともに問題なかろう」
俺の身長は162cm…歩より少し大きい程度。周りからは女顔といわれるし、自分でもそう思う。髭とか体毛も薄いほうだ…ってまさか。
「翼には女の子として鳳桜に通ってもらおうと思ってな」
…その瞬間、俺の運命が決まったのだ。
…こういった経緯で、俺は女として鳳桜女学園に通うことになった。
あまり自慢にはならんが、元の素材がいい?せいか、化粧とか鬘とかもまったく使わずに生活している。
…スカートは未だに慣れないけど。
一度試しに着てみたら歩に大笑いされて…似合い過ぎるってね…
…そんなわけで、今日も元気に?登校。
なぜか今日は一緒のはずの歩が先に行っちまって、一人なのだ。