新説『忠臣蔵』
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時は江戸…天下泰平の時代。 「吉良殿!是非お教え願いたき事がございまする!」 江戸城、松の廊下。 一人の若い武士が年老いた武士を呼び止めた。 「これは浅野殿…何か御用でござるか?」 「はっ!明日ご勅使ご到着の折、我等は玄関の敷台の上にてお待ちすべきでしょうか?はたまた下にてお待ちすべきでしょうか?是非お教え願いたい!」 この若い武士、こう見えても五万三千石の所領を持つ大名である。 この度、朝廷から幕府への使者をもてなす“饗応役”というお役目を仰せつかって、その準備に追われている。 一方、老人の方は“高家”という幕府内で儀礼式典を取り仕切る役職にある者で、饗応役になった大名に式典での礼儀作法を教えてあげる役目…その筆頭にある者である。 ところが、この高家と饗応役の間には、不文律というか、暗黙の了解のような、ある決まり事があった。 それは、饗応役となった大名は高家に付け届け…すなわち賄賂を送るという物である。 もっともこの場合、賄賂と言っても半ば公認の物であり、いわば色々と教えてもらうに当たり、前もって収める“授業料”とでも言うべき物であった。
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