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何の教訓も意味も無い話
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何の教訓も意味も無い話 1

【二人の奴隷】

昔々、旅の商人が二人の奴隷を連れて旅をしていました。
一人は健康な奴隷、もう一人は片足の悪い奴隷でしたので、商人は健康な方の奴隷には沢山の荷物を、足の悪い方の奴隷には少しの荷物を持たせていました。
ある時、健康な奴隷が足の悪い奴隷に言いました。
「僕達は同じ立場なのに君の方が荷物が少ないなんてズルいじゃないか。持つ荷物の量は二人とも同じにすべきだよ」
それに対して足の悪い奴隷は言います。
「でも僕は片足が悪いから、多くの荷物を持って歩くのは、とても辛いんだよ」
「でも出来ない訳じゃないだろう? 出来るのにしないというのはズルいじゃないか。君は卑怯だ。やっぱり同じ量にすべきだよ」
そして健康な奴隷は主人に掛け合って、二人の荷物の量を同じにしたのでした。

やがて一行は険しい山道に差し掛かりました。
足の悪い奴隷は健康な奴隷に言いました。
「ねえ、この山道を抜けるまでで良いから持つ荷物の量を元に戻してくれないかい?」
健康な奴隷は答えました。
「冗談じゃないよ。僕だって辛いんだからね」
実はそれは嘘でした。
本当は持つ荷物の量が今までよりも減ったおかげで、かなり余裕があったのです。

山奥に進んで行くと、道は更に険しくなりました。
足の悪い奴隷は息も絶え絶えといった様子で健康な奴隷に頼みました。
「お願いだよ。たった一つでも良いから荷物を持ってくれないか? 僕はもう本当に限界なんだ」
しかし健康な奴隷は首を横に振って言いました。
「だめだめ。辛い思いをしているのは君だけじゃないんだ。僕だって辛いんだよ。荷物は持ってあげられないよ」
ところが健康な奴隷は心の中では、こう思っていたのでした。
(良い気味だ。今まで僕に多くの荷物を持たせて楽をしてきた報いが今になって返って来たんだ。せいぜい苦しめば良いのさ)

進めば進むほど山道は更に険しさを増し、健康な奴隷の方も少し辛くなって来ました。
(ああ辛い、こんな険しい山道は早く抜けてしまいたいよ)

ある地点で足の悪い奴隷が主人である商人に言いました。
「お願いします、ご主人様。ここで少し休憩させてもらえませんか?」
「そうだな。そうするとしようか」
主人は足の悪い奴隷の提案を承諾しました。
ところが健康な奴隷は反対しました。
「冗談ではありませんよ、ご主人様。こんな山道は一刻も早く抜けるべきです。休まずに歩き続けましょう」
更に足の悪い奴隷にはこう言いました。
「今が一番厳しい所だよ。ここさえ乗り切れば後は下り坂だ。そしてまた平坦な道に出る。もう少し頑張れよ」
「そんな事を言われても、もう一歩も前に進めないんだ。これ以上無理をしたら本当に死んでしまうよ。君は健康体だから良いだろうけど、僕は足が悪いんだ」
「弱音を吐くなよ。君はここまで僕と同じ量の荷物を運んで来たじゃないか…」
「そうだよ。かなり無理をしてね」
「口を挟むなよ。…という事は君の足の悪さは、そんなに大した物じゃないって事だ。君は足の悪さのせいにして辛い事から逃げようとしているだけの弱虫だよ。さあ、行こう。もうすぐ山頂だよ」

そして結局、一行は休まずに歩き続ける事にしたのでした。

ところが、ここで予想外の出来事が起こりました。
足の悪い奴隷が本当に死んでしまったのです。
健康な奴隷は言いました。
「まさか本当に限界だったとはな。ご主人様、いくら僕でも二人分の荷物は持てません。いくらか捨てて行くしかありませんよ」
商人は言いました。
「ダメだ、ダメだ。大切な荷物だぞ。一つだってこんな所に捨てて行く訳にはいかないんだ。二人分、全てお前に持ってもらうしか無いな」

こうして健康な奴隷は今までの二倍の量の荷物を持たされる羽目になり、まもなく死んでしまいました。


【大胆な医者】
ある所に名医と呼ばれているお医者さんがいました。
どんな病巣でも必ず残さず取り除いてしまう凄腕のお医者さんでした。

ある日、患者が来て言いました。
「先生、一週間前に左足の膝っ小僧をすりむいた所を放っておいたら傷口が膿んでしまいました。何とかしてください」
「ふうむ…」
お医者さんは患部を見て言いました。
「…わかった。では足を切り落とそう」
「ちょ…ちょっと待ってください!たかが膿みぐらいで足を切り落とされたんじゃ適いませんよ!」
「まあ良いから私の話をお聞きなさい。そのまま放っておいたら膿みは左足全体に…やがては全身に回って君は死んでしまう。切り落とすしかないのだよ」
こうなると患者も「名医と言われている先生の言う事なら間違いあるまい」と考えて納得しました。
こうしてお医者さんはその患者の左足を切り落としてしまいました。

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