男の前には紅茶、女の前にはシフォンケーキと、ライムの浮かんだジントニックのグラスが並んでいる。女はぐちゃぐちゃとシフォンケーキをかき混ぜ、原型を留めない塊になったところで、両手で掴んで食べた。ぺちゃぺちゃと咀嚼する音とともに目がとろりし、冷たい微笑は、その瞬間だけ赤ん坊の浮かべる純粋な笑みに変わった。
客が少ないために女の行為に眉をひそめる人間はいなかったが、女なら衆人の注目する舞台の上ででも、その通りに食べるだろう。
それから、女は薬をとりだして、ジントニックで飲んだ。
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