ヨハンのチカラが氷であるのに対し、俺自身の能力は「発火」だ。
ヨハンと同様に、それは決してありふれた能力ではない。分子運動の加速による「加熱」の能力であれば、大なり小なりの形で発現することは多い。
この手に宿る力は、分子運動の加速ではなく、「熱量」の創造だった。そのことが他人に気づかれたとき、あらゆる人間は恐怖した。…たった一人、ヨハンを除いて。
検証しえた限りでは、熱量の創造は時間とともに加速度的にその力を増していく。そこに生まれるエネルギーは、俺の意思ひとつで無限大に増え続ける。試したことすらないが、理論上は太陽すら創造可能な能力なのだろう。
その事実が知れ渡った結果、俺は、力無き人々に迫害された。運命に対し無力な人々から虐げられた。
同じく無力な、俺の家族とともに。
―そして、町が一つ消えた。
俺の、最期で最初の記憶。母親の怨嗟の声。動かなくなった父親。
『あなたは私の子供じゃない』
母の悲鳴に似た罵声。
『悪魔の子よ』
そして俺が、【アーノルド】が生まれた。
そしてヨハンは、微かに残った【オレ】すら壊そうと囁く。
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