オルゴンの耳に、その声は入ったとも思われぬ。ウェリアルの唇とおのれの唇が離れると、さきほどとはうってかわって神妙な面持ちとなって、ミルボロには見向きもせず、呟いた。
「シムリュイの深き森を統べるエルフの加護を我が手に――春の息吹、生命の力を司る女皇子(ひめみこ)ウェリアルの宝剣よ、顕れ出でよ」
「我が加護を、オルゴンに」
ウェリアルが、こちらも神妙な口調となって応じた。とたんに、空となっていたオルゴンの掌に、深緑色の光が灯った。それは見る間に眩さを増して新芽の黄緑から陽光の黄金となる。
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