ランドランド〜キラの旅立ち〜 1
竜歴063年…
世界の名だたる戦士たちを率いた勇者は魔剣『竜の牙』を使いて、世界を混沌に落としめていた異界の魔物を討ち果たした…
その後、勇者たちは方々へと散り、戦士たちの戦いは神話として語り継がれることとなった…
それから200年…勇者たちの伝説は忘れ去られようとしていた…
ときは竜歴263年…炎(ホムラ)の国マホロバ…
漆黒の髪をなびかせて颯爽と馬を駆る少年が一人…町中を進んで…いや…「うわわわぁ〜どいてくださぁ〜いぃ!!」
少年は馬の鬣につかまっているのがやっとという感じで…町中の屋台やら商品やらをはね飛ばしながら進んでいく…
「また…キラか…あの落ちこぼれめ…ジークランド家も終わったな…」『うわぁぁぁ〜』「父上は東方大戦の英雄だというのに…」『のわぁぁぁ〜』「とんだ失敗策じゃの…」『ひぃぃぃ〜』「王立アカデミーでもドベの成績らしいぞ…」『ぎゃあぁぁぁ』「あれで勇者の直系なのじゃから…世も末かの…まあ平和ということかの…」『ぬわぁぁぁ〜壁がぁ…壁ぇぇ〜』ドンガラカッシャッ〜ンン…
少年は勢いよく地面に叩きつけられた…
『まったく馬にも乗れんのか…』『ジークランド郷の面汚しだの…』
(うるせえよ…全部聞こえてるっつうの…親父とオレは違うんだよ…)
少年の意識はここで途絶えた…
くすくす…くすくす…
こんなのを、玉を転がすような笑い声というのだろう。しかし、彼の心中…
(ううっ…よりにもよって、こんなやつに見付かるとは…)
ちなみに、見付かるという言葉を、あんな大騒ぎで人の注目を集めた人間が使うのは間違っている。
まあ、とにかく彼が意識を取り戻したとき最初に耳にしたのは、その、よく知った、あまりありがたくない、美しい笑い声であった。