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百年戦争
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百年戦争 1

 1337年から1453年の長期に渡って続けられた『百年戦争』。その発端は、フランス王シャルル四世の死から始まった。
 彼は息子も、兄弟もいなかった。そのために選ばれた王の候補者は、三名。
 一人は王族の分家であるヴェロア家の息子、フィリップ・ヴァロア。
 一人は1234年にフランスの王侯に支配されたナヴァル国の王、フィリップ・デヴリア。
 一人は当時のイギリス国王、エドワード三世。
 この三人の中で特に有力視されていたのは、血筋的にシャルル四世に近い、シャルル四世の姉の息子である、エドワード三世。そしてシャルル四世の叔父の息子であるフィリップ・ヴァロアだった。
 最終的にフランス人の支持をより多く得たのは、ヴァロアだった。彼が選ばれた理由は大きく二つ。一つは『王国に生まれた』こと。そしてもう一つは『既にイギリス国王であるエドワード三世よりかは信用出来る』という、簡単で不明瞭な理由からだった。
 他の二人の王はこの結果に納得出来ず、イギリス国王であるエドワード三世は、1340年2月8日、ベントにてフランス国王、フィリップ・ヴァロア王に対し、宣戦布告する。
「王」
 テラスから訓練場を見ていると、誰かの声が聞こえてきた。
 右側を見ると、我がイギリス国の参謀がそこにいた。
「困ったことになりましたな。悔しいですが、騎士の腕は我が国よりもフランスの方が上ですぞ」
 その言葉を聞いて、俺は「チッ」と舌打ちした。
「仮にも一国の参謀が、軽々しくそのような言葉をするな。お前でなければ死刑に処しているところだぞ」
「王の前だからこそ本心を打ち明けているのです。このような島国が大陸に宣戦布告するのです。勝機はあるのでしょうな?」
 相変わらず、歯に衣着せない奴だ。本当に首を切ってやりたくなったが、今は下らない内乱を起こしている暇は無い。
「見ろ」
 テラスを指す。訓練場では、兵士が腕に機械仕掛けの弓を巻きつけて、矢を発射していた。
それを見て、参謀が「ほう!」と感嘆の声を上げる。
「新兵器ですな。あれは何と言うのですか?」
「十字の形で腕に巻きつけるから、クロスボウと呼んでいる。矢をセットすれば、自動的に発射する仕掛けだ。訓練次第では、緒戦の弓の打ち合いでフランスの優位に立つことが出来るだろう」
「ほう……。流石は王ですな。それでは私の方の成果をお教えしましょう」
 その言葉を聞いて、また俺は舌打ちした。王である俺に先に成果を伝えさせるなど、まともな臣下のすることではない。
「聞こうか」
「は……。フランスの北に、フランドル地方という場所があります。毛織物工業で栄えている地域なのですが、フランス国がここに目をつけて、武力を用いて不利な条件で取引をしているため、フランドルに住む市民は皆フランスに敵意を抱いております」
「成る程。それで、フランドルの商人を利用するつもりか」
 俺がそう言うと、参謀は目を剥いて手を叩き、喜んだ。
「ほっほっほっ! 流石は我が主、聡明でおられる。その通り、あの地にいる商人達は皆我々に協力し、フランス軍と戦う姿勢です。これで些少ながら資金と、大陸での地盤を得ることが出来ました」
「そうか。良くやった」
「恐縮の極みにございます」
 参謀の慇懃無礼な態度は最早、気にならなかった。
 フランドルが支援してくれる、となると、最早躊躇うことは何も無かった。
「兵の仕上げを急がせよう。フランス軍に宣戦布告するぞ」
 そう言うと、参謀はにやりと笑い、頷いた。
 腹が立つが、中々に頼もしい笑顔だった。

 このような戦略もあって、最初は英軍が優勢であった。加えて、仏国内ではペストの流行や農民一揆などが重なり、国家崩壊の危機さえ迎えていた。
 しかし、そこに現れたのが、かの有名なジャンヌ・ダルクである。彼女は『神の声』を聞いたとされ、オルレアンの包囲網を破る活躍を見せた。その2年後、彼女は英軍によって火刑に処せられたが、これ以降仏軍が盛り返し、ついに1453年、長かった戦争は仏軍の勝利で幕を閉じたのである。

わずか18歳で火あぶりに処せられたジャンヌ・ダルク。悪魔と聖女、二つの名で呼ばれた彼女は歴史の渦に身を投じ、その波に飲まれ儚く短い生涯を閉じた。が、その500年後、バチカンの地にて聖女にめっせられた…。


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