「……先生,止めて。笑わないで……,」
紅はひらりと視界を錯綜する。其れを見て俺は思う。先生が逝ってから4度目の春が来たんだ,と。其の想いが道に広がる桜の花弁を,一瞬にして緋色に変えてしまった。ちょうど,握り締めた儘のナイフを先刻から滑り絡まる,血のように。そんなこと,あり得ないのに。俺も結構重傷だ。 鳴かぬ鳥が羽ばたく。其れが遠のくのを待って,先生が口を開いた。出来れば此の儘何も言わないでほしい。でも聞かなくてはならない。約束の4年目,今日は大学の入学式……。
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