「俺な・・・」
ノートを開く私の横で、唐突にトシヤが口を開いた。
「ん?」私はトシヤを見詰める。
真直ぐに前を向いたままのトシヤの横顔は、男には勿体無い、長い睫が揺れていた。
「何?」
開始を知らせるチャペルの鐘を聞きながら、私は小さく首を傾けた。
「いや、何でもないんだけど・・・」
「言ってよ、気になる」
「沙希には知っていて欲しくてな・・」
「だからぁ〜・・・何?」
生徒と見間違える程に若い講師が皮靴の踵をタイルに鳴らしながら入って来る。
この講議が女たちで満席なのも納得がいく。
私はぼんやりとこの講師の派手なネクタイを眺めながら、
トシヤの返事を待っていた。
「俺な・・・ミカさんのこと・・・好きになった・・・」
↑に続く文章を投稿して下さい
©2002-2024 PIPI's World 『投稿小説』 All Rights Reseved. | 投 稿 小 説 |