旅好き親父の遺したもの
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―つい先日亡くなった俺の親父は、大の旅行好きであり、また大の鉄道マニアでもあった。 その趣味が高じてか、あるとき、小さな出版社を立ち上げた。 主に出版していたのは、旅行や鉄道に関する雑誌と、それに関連した書籍。 親父は、雑誌や書籍の充実を図るために、自らの足で日本全国を旅して回っていた。 最初は親父一人という小さな規模の会社は、年を追うごとに業績もよくなったのか規模が拡大し、十数人の社員を雇うまでになった。 親父がこれだけ自由人でいられたのには、理由がある。 親父の奥さん…つまり俺の母さんが、病気で早くに亡くなってしまったからだ。 母さんが亡くなったのは、俺を出産した直後。なので、俺も母さんの顔は知らない。 それ以降俺は、親父の両親…祖父ちゃんと祖母ちゃんに育てられたのだ。 因みに、祖父ちゃんは旧国鉄の職員だった。これも、親父を鉄道マニアにさせる下地だったかもしれない。
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