女嫌いが女になったら 40
『はぁはぁ……はぁはぁ…もぉ!』
女って走るのが何て遅いんだろう。動くたびにこう、胸が揺れるのは気になるし…。それに周りの連中の視線も痛い。
『数世ちゃーん、遅いぃ!!』
『数世ぉーーースカートが捲れてる!!』
『あ、ごめん。待たせちゃった?』
小百合と弘美が待っている。こんな時間までいてくれる親友に感謝しなくちゃな。
『数世、珍しいわね。こんな時間に来るなんて。』
『そうそう、どうしたの?何かあった?』
『ううん、なんでもない。寝坊しただけだから…。』
昨日は乙女っちくになってましたって言えない。
思い出すたびに頬が熱くなるのがわかる。
二人に気がつかれないうちに・・・。
『二人とも、ゆっくりしてると遅刻するよ。急ごうよ!』
『『あ、数世(ちゃん)!!』』
俺は二人を残して駆け出そうとした時…ドン!!
と誰かにぶつかったのだ。
『あいたた……!!な、なに?いきなり…。』
『お前こそなんだ、いきなり。お、数世じゃねぇか。』
『あ、蜜月先生。』
俺がぶつかったのは、この学校の保健医である蜜月楓(みつづきかえで)。
切れ長の瞳に綺麗な顔立ち。黒のボディコンにナイスバディを包み、その上から白衣を羽織っている。
開いた胸元から覗く谷間を見れば解るように、そのバストは明らかに数世以上で、Gカップはあるだろう。
腰まで届くかという栗色の長髪を掻き上げる仕草は、とても淫靡でセクシーである。
俺は尻餅をついてヒリヒリするお尻を、手で摩りながら立ち上がった。
大丈夫?と寄ってくる小百合達に平気平気という仕草を見せ、その保健女医を見遣る。
蜜月は170を越える長身のため、数世は完全に見上げる形になる。男の時でさえ身長は同じくらいだった。
『ごめんなさい、急いでたから・・・。』
『はは、いちいち謝んなよ。ボーッとしてた私も悪りぃんだから。』
あっさり許してくれる。実は俺と蜜月は仲が良い。
俺の正体こそ知らないが、俺の相談に乗ってくれたり、談笑したり、お菓子くれたりと、頼れる存在だ。
『あ、そうだ。ちょっと来いや。』
『あっ、えっ?わあっ!』
俺は蜜月にブレザーの襟首を掴まれ、ズルズルと引きずられて行く。何だか知らないがすごい力だ。
『さ、小百合!弘美っ!助けてぇ〜!』
期待薄な救援要請は届かず、俺は保健室へと連行された。
端から見れば妙な光景だっただろう、ワイルドな美人保健医に引きずられる学校一のプリティアイドル。
そして保健室へ。
『一体何の用なんですか、蜜月先生。』
『二人の時は楓って呼べっつったろ?』
そう言って湯呑みにお茶を注ぐ蜜月。俺はベッドに腰掛けている。
俺達はこんな感じで、よく二人で会っていたのだ。