淫獄の迷宮 1
ヒューーーン
ビターン!
「ぐえーぇ!!」
『冒険者 ラルク・グレーシェル は 落とし穴に落ち死んでしまった』
ラルクの冒険者 完
「まだ死んでねぇー!!」
俺は痛む身体を無理やり起こすと、雑に殺そうとしていた天の声に猛抗議する。
『チッ…』
くそ、舌打ちしやがったぞ。
「まあいいや…ここはどこだ?」
まったく知らない階層に落とされてしまったようで、辺りには人影は見えず俺の独り言だけが響いた。
「とりあえず状況を整理するか」
俺はこうなってしまった経緯を思い出す。
この世界には大昔に神や悪魔が作ったダンジョンがそこら中に存在した。
俺たち冒険者はそこに潜り、お宝や資源を回収し金を稼いでいた。
ダンジョンの中には進入条件が設定されている物もあり、今回は異性同伴でないと進入出来ないなダンジョンに挑戦していた。
ただ俺はピンの冒険者だったので、今回に限り同じ目的の者を募った急造パーティーで挑戦したのだ。
そしてダンジョン内を探索していて気付けばこの様だ。
「助けは……来ないよな」
急造パーティーのルールで、他のメンバーに被害が出る可能性がある場合は、脱落者は見捨てるというのが常識なのだ。
逆の立場だったら俺だって見捨てるという選択を取る。
「さて、どうしたものか…他の階と繋がっていればいいのだが…」
不安から独り言を呟きながら周囲を探索する。
運が悪いと周囲から隔離されたフロアという場合もあるので気が気ではない。
「……ここも行き止まりか」
どれだけ時間が経っただろうか、迷い続ける俺は精神的に疲れ初めていた。
最初に落ちて来た場所から四方八方に伸びる小道の半分が、かなり歩かされた上に行き止まりだったからだ。
「はぁ…次はここか…ここも外れかもな…」
期待は持たずただ歩き出す。
「おや、ちょっと歩き易い」
他の通路に比べ、この通路は歩き易く成るように手が加えられた痕跡があった。
「これはもしや…」
俺は淡い期待を持ちながら奥へと進む。
「おっ!通路が開けて……あれは人影か!」
通路の先に人影が見えた。
「よっしゃー!脱出できる!オーイ!」
余りの嬉しさに手を振りながら走り出してしまう。
「……ん?」
完全無視?
まったく反応がない。
いや流石にそれは酷くね?
赤の他人とは言えダンジョン内では助け合いは大事だろ。
俺はちょっと腹を立てながら更に近づく。