青山さんと白峰さん 1
昼休みの教室。
窓際で気持ちよさそうに舟を漕ぐ黒髪ショートボブの親友に、あたしはさっき自販機で買ってきたばかりのオレンジジュースをぴとっと頬にくっつける。
「ひぇっ!?」
「おお、お目覚めだー」
「な、何するのよぅ」
「いやいや、気持ちよさそうにおねむだったもんでつい」
「あのねぇ」
あたしは白峰莉花。
そしてこちらの寝ぼすけな親友は青山澄香。
あたし達はお家はお隣同士、幼稚園の頃から常に一緒の親友である。
「珍しいねー、優等生の澄香が授業中に居眠りとは」
「…そうでもないよ…あと、最初っから寝てたわけじゃないから」
そう言って一発大欠伸する澄香。
こんな姿でも可愛く見えてしまうのが羨ましいんだぜ。
澄香の席にあたしもお弁当箱を持って一緒にお昼。
これがいつもの習慣。今までずーっと一緒。
「夏本番って感じだねー」
「そうだね。これから暑くなるね」
「うん…」
なんかいきなり窓に視線を移してため息しおったぞ。何があったし。
「…始まるんだね」
「ああ…」
澄香の視線の先にはうちの学校のプールが。
そうだ、この子は運動が苦手。特に水泳はまったくダメ。
…言ってるあたしも人のことは言えないんだけどさ。
勉強に関してはクラス、いや学年トップクラスでもある澄香。
しかし運動はからっきしで、何やっても全然ダメというある意味わかりやすい人だ。
…あ、あたしも勉強では中の上クラスだからね。
でなきゃ親友の澄香と一緒の学校、一緒のクラスにはなれないもんね。
あたしもぶっちゃけ澄香のことを馬鹿になんて出来ない。むしろ同類項。
中学生の頃一緒にマラソン大会サボったのはいい思い出だ。後で怒られたけど。
「なんか理由つけて見学とかにしたらいいんじゃないかな」
「…うーん…できるの?」
「今年のセンセは女の人だからまだわかってくれると思うよ?去年の男だったらアレだけどさ」
「うーん…そっかぁ」
窓の向こうに思いを馳せながら、悩ましげに頬杖つく美少女。
…うーむ、絵になる。
そりゃあ男子からの人気も高いわけだよ、わが大親友。
「リカ」
「んん?」
「…なんか楽しそうだね」
「いやいや、そんなことないよ、全然ない!」
「リカだって得意じゃないでしょ?」
「…まあね」