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木陰
官能リレー小説 - 時代物

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木陰 1

背中にまとわりつく気配を察し、留吉は足を止めた。
振り返る。誰も居ない。
榎の木陰に旋風が立ち、朽葉を宙に巻き上げていた。風が収まると、榎の幹には切り裂いたような大きな裂け目ができており何かが動いた気がした。
「なんじゃ…」
留吉は呟き、足を踏み出した。
だが、次の瞬間、背筋を走った悪寒に身を縮めた。
(…ただならぬ強烈な威圧感がある)
そう感じて辺りを見回す。
木々に囲まれた雑木林の中だ。鳥や獣の声はするが人の気配はない。
(まさか)
そう思った刹那、足元で枝を踏む音がした。反射的に振り向く。
そこに男が立っていた。
黒い着流しをまとっている。顔は薄暗い中にあってなお青白く、目は虚ろだった。
「な、何者じゃ!」
驚きながらも留吉は身構えた。
男は無言のまま着流しを左右に開き、帯に手をかけた。するすると解いていく。着物の前が開いていき、胸板から腹までが露わになった。
男は無造作に着物を脱ぎ捨てた。その下は何も身に着けていない。
留吉は息を飲み込んだ。
男の股間にそそり立つものは人並み外れて大きかった。太く長く、それでいて禍々しいほどに黒光りしている。先端からは透明な汁が流れ出していた。
「うっ」
思わず目を逸らそうとした留吉だったが、その動きは途中で止まった。男の顔に見覚えがあったのだ。
「お主…源右衛門殿か?」
恐る恐る声をかける。
男は答えなかった。口元だけが僅かに動く。
「…」
「何をしておられる? なぜこのような場所に居るのじゃ?」
留吉は尋ねた。しかし、源右衛門は無表情のまま近づいてくるだけだ。
留吉は後ずさった。
(なんという凄まじい気迫じゃ。これが巷で噂される鬼というものなのか?)
角こそ生えてはいないものの、その迫力は尋常ではない。
留吉はさらに後退しようとした。だが、その背はすぐに木の幹に押しつけられた。もう逃げ場がない。
「よせ! 近寄るでない!」
留吉は叫んだ。だが、源右衛門の動きに変化はなかった。そのまま覆い被さってくる。

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