PiPi's World 投稿小説

素直になれなくて
官能リレー小説 - 純愛

の最初へ
 -1
 1
の最後へ

素直になれなくて 1

花粉の鬱陶しさも過ぎ去り、麗らかな陽気が辺りを包む頃。昼下がりの皇居のお堀端にそびえるビルのカフェテラス“セラヴィ”で、妙齢の男女がなにやらと話していた。
「山城。久しぶりよね…」
「ああ…。俺、五十嵐とランチするのって落ち着くな…」
「ウフフ、ありがと。山城…」

山城和樹と五十嵐涼子は、ともに大卒後財閥系化学メーカーに入社して10年経った32歳。和樹も涼子も、お互いを異性として見ておらず、“気の合う仲の良い同期”として見ていた。
一方の和樹も、営業職として外回りをしていた際、コンビニやファストフードの店の濃い味付けの料理ばかり食べていた生活から、本社勤務中心の情報システム部勤務になったことで、同じフロアの統括管理部に勤務する涼子に再会したのを喜んでいた。

勿論、涼子が和樹に感じているのと同じくらいの居心地の良さや気楽さもあるが、涼子の抜けるように白く艶やかな肌や、吸い込まれそうなグレーの瞳、ウェーブのかかった栗色の髪や、清潔感と上品さを感じる濃紺のタイトスカートスーツと、薄い水色のストライプの入ったブラウスを身に纏った姿を見て、いけないと思いながらも和樹の胸はドキドキと高鳴っていた。

「そろそろエレベーターも混むし、行こうか…」
「そうね…。もう12時45分だし、私達はオフィスフロアの最上階だもの」
和樹と涼子は立ち上がり、一緒に歩き出した。
日本人男性の平均値と同じくらいの身長170cmと長身の涼子と、身長185cmと長身で浅黒い肌、清潔な印象を与える短髪、引き締まった体型に彫りの深い目鼻立ちが精悍な印象を与える容姿をしている和樹が同じような紺色のスーツを着て、エレベーターホールへと歩く姿は、2人は認識してはいないがまるで似合いのカップルのように様になっている。

実際に、和樹と涼子を見て賞賛と嫉妬の混ざった眼差しを向ける者は多かった。
 特に、2人と同期の辰巳裕司と上條篤志、そして小早川真由は、嫉妬混じりに見ていた。
「はぁ…。見るからに様になっている美男美女だよな…」
颯爽とエレベーターホールへと歩いていく和樹と涼子の後ろ姿を目で追いながら、独り言のように呟く裕司に、真由と篤志は同調するような反応を示した。
「だよな。あの二人、下手な芸能人より華があるし頭もいいんだよな」
腕を組みながらグレイのスーツにブルーのストライプの入ったシャツと、紺色のネクタイを締めた篤志が頷くと、
「そうそう。でもさ、それでいて人当たりも良いなんて神様は依怙贔屓しすぎだよね」
と、ピンクのボーダーのシャツにクリーム色のスカート、と春らしい華やかさのある服装の真由がコンビニのドリップコーヒーを片手に話す。
「涼子さんってさ、会長の一人娘でこの会社…て言うか財閥の次期会長になるような立場じゃん。てことはさ、山城和樹は逆玉…?」
篤志は、やや他の二人に自慢するような口調で持論を展開する。
「夢はセレブ〜♪て感じ?繊維や樹脂の部門の営業から、情報システム部に異動になったのが、何となくわかるよね」
三人はエレベーターが混み出す前に、入場ゲートに入退室カードをかざすと、中層階用のエレベーターへと向かい、和樹と涼子のあとに別のエレベーターに乗り込んだ。   

SNSでこの小説を紹介

純愛の他のリレー小説

こちらから小説を探す