実家がヤリ部屋に 1
高校3年の夏休み、これまで青春を捧げて来たバレーボール部を引退した私は久しぶりに実家に帰ることにした。
後輩の面倒を見るという選択肢もあったけれど、同じポジションの後輩が優秀であまり成果を残せなかった私はどことなく後輩に合わせる顔がなかったのだ。
部活に専念するため寮に入り、一切帰らなかったから2年とちょっとぶりの帰宅になる。
お母さんに帰ることは伝えてあり、「迎えに行こうか?」と聞かれたけれど、久しぶりの地元を感じたかったので自分で帰ると返事を返した。
「懐かしいな〜」
2年ぶりではあるが大した変化のない地元の様子を確認しながら家までたどり着いた。
「ただいま〜」
「おかえりなさい」
出迎えてくれたのは母だった、試合を見に来てくれたりはしてたけど久しぶりに会う母に喜びのようなものを感じた。
「元気そうでよかったわ」
母は私の荷物を受けとるとリビングの方へと歩いていく。
『お母さんあんな服来てたっけ』
キャミソールにホットパンツとかなりラフな格好の母そんな格好の母を見た記憶がないけれど、今年は特に暑いしそのせいかもしれないとあまり深くは考えなかった。
リビングに入りTVの前のソファーに座る。
テーブルの上には飲みかけのグラスが2つある。
「麦茶でいいよね」
カラカラと涼しさを感じる氷の音をたてながら母が麦茶の入ったグラスを持ってきてくれた。
「ん〜おいしぃ〜」
市販のパックと水道水のどこにでもあるような麦茶だけれど、蒸し暑いなか外を歩いてきたアタシには最高の一杯だ。
麦茶で一息つくとそのまま母とおしゃべりが始まる。
2年年も離れていたのでお互い話したいことがたくさんあるので脈絡のない話が続いていく。
「そういえばヒナは?」
今日帰る事は1つ年下の妹の陽菜にも伝えてあるのに姿が見えない。
「ヒナちゃんはまだ寝てるかもしれないわね?」
まだ寝てるってもうお昼過ぎだし、真面目な陽菜がそんな自堕落な事するのかなぁ?
家を離れている間に家族にも変化があったと言うことなのかな?
まぁ、寝ているなら無理に起こすこともないか。
「汗でベトベトするからシャワー浴びていいかな?」
話に夢中になっていたけど、汗が引き着ていたTシャツがベトベトな事に気がついた。
「クローゼットの中身は洗っておいたから着替えは自分で持っていってね」
「ありがと、お母さん」
アタシはカバンを持って2階の自分の部屋に向かった。
「久しぶりだな〜」
部屋に入ると2年間時間が止まったままなのにしっかりと掃除がしてあって母の優しさを感じてちょっと泣きそうになる。
机の上にバックを置くとクローゼットから着替えを取り出す。
『あれ?』
壁越しに物音が聞こえる気がする。
起きたのなら降りてくれば良かったのに…
とはいえ、今顔を会わせたらまた話し込んでしまいそうなのでとりあえずお風呂場へ向かうことにした。
久しぶりなのに体が覚える。脱いだ服を洗濯かごに入れ壁にあるスイッチを押してお風呂場に入る。
「は〜気持ちいい〜」
程よい温度のシャワーに心の声が漏れでてしまう。
『どんなヘアスタイルにしようかな?』
バレーの邪魔になるからとずっとショートボブだった髪が少し伸びてきたのを確認しながら泡立てたシャンプーを頭に乗せたのと同時にガチャっとお風呂場の扉が開く。
「キャー!」
見たことのない男が入って来たのだ、アタシは大声をあげると同時にその場にしゃがみこんだ。
「あちゃー、お姉ちゃん帰って来るの今日だったけ」
男の後ろから覚えのある声が聞こえる。
「お姉ちゃん久しぶり〜」
男の後ろからひょこっとギャルがあらわれた。
金髪に黒く焼けた肌、いままで接点のない人種の登場にさらに混乱してしまう。
アタシの妹は真面目を絵にかいたような優等生タイプだったはずなのに目の前のギャルの声は聞きなれた妹のそれだった。
「ヒナなの?」
「そだよ。あーし達も汗流したいから一緒にいいよね?」
陽菜はそう言うと男と一緒にお風呂場に入り扉を閉めた。