僕はスマホにちらっと目を落とした。
　上がりにくかった百合の好感度は15上がって19になっていた。
　「お風呂、暖まってるから、いつでも入ってね」

　百合はそう言うと、僕の隣の席に座った。
　「むかーし、お風呂、一緒に入ってたことも、あったね」
　百合は視線をこちらに向けないで言っている。
　「かなり昔の話だな。何でまたそんな話を」
　「お兄ちゃんが…もっと、もおーっと、優しくなったら、また一緒に入ること、考えてあげても、いいかな、って思って」
「ばっ、馬鹿な事言うなよ！」

そう言いながら視線を逸らすようにスマホを見ると、更に俺を戸惑わせる表示が出ていた。
百合のステータス項目に『お風呂イベントで強制奴隷化ルートが選択できます』とあったからだ。

「どうしたの、お兄ちゃん？」
「い、いや、ちょっとスマホがフリーズして焦っただけだよっ」

俺の様子に百合がそう言ってくるのを、適当な理由で誤魔化す。
百合は好感度と服従度の上がりが遅い。
これは肉親補正なのだろうか？

だとしたら、裏を返せば肉親で無いゴリ仲は百合の攻略ハードルは低い・・・
百合は贔屓目に見なくても美少女だから奴のターゲットにならない保証は無い。
それにアイツだけがアプリを持っていると言う可能性は無い。
それに聡美や恵梨香だってランク５奴隷まで上げないと、取られてしまう可能性だってあるのだ。

これは相当ゲーム性が高いと言うか、結構シビアかもしれない。
そして何より、俺の欲望が・・・
あれを見てぐるぐると渦巻いていたのだ。

といって妹である百合を奴隷化するのは気が引ける。
一応、全員の数値を確認してみると…あれ？
百合の数値はさっき見た通りだったが、取り消し線で消されてたはずのメイド、愛の結晶、生殖力の三項目のうちメイドの項目の取り消し線が消えていて、数字は3になっていた。
あんまり一時に手を広げてとりあえず女の子達を繋ぎ止める受けの手にすべきか、それともさっさとゴリ仲の動きを止める攻めの手に出るべきか？
とりあえず、夕食食べよう。
なんか、味が違う。いつもより甘口な気がする。でもこれはこれでいいな。

「これ、おいしいよ！」
「そぉ？よかった！」

百合が作ったのかこれ。母さんの料理かと思ってた。

「これだと百合には結婚しないで欲しくなるな。百合の旦那になる奴に嫉妬しそうだ」
「へへ〜」

嬉しそうな百合を見ていると僕もほっこりする。

…恵梨香に夜這いしてみようかな…？
　僕はそう思い、飯が終わったら手早く風呂に入った。
　“そういえば、あのアプリ、今のレベルだと奴隷ルートは二人までしか選択できなかったはず。もし百合まで奴隷化に進んでいたら恵梨香か聡美のどちらかをあきらめなくてはならなかったのだろうか…”
　「お風呂イベント」への分岐が起こったらまた決心が揺らぎそうだ。僕はあまり時間をかけずに風呂を出て、再び外出できる服装になって家を出た。

　恵梨香の家って、どのあたりなのだろう？
とりあえずチャットアプリで恵梨香にメッセージを送ってみる。
すると、数分も経たず返事が帰ってきた。
地図付きで早く来てください的なメッセージ。
無闇矢鱈に探すよりこれがいいよね。

恵梨香の家は歩けば１５分ぐらいの距離。
歩きながら今後の事を色々考える。

現在アプリのランクが２。
奴隷の数はまだ２のままだ。
あそこで欲望のままに動けば大変な事になったかもしれない。
つくづくゲーム性が高いと言うか、こう言うトラップめいたものもあるのがなかなかスリリングだ。
ちょっとよく考えて行動した方が良さそうだ・・・
と言いつつ、僕の今の行動は、全く考えなしもいいところだった。

まずやることは、聡美と恵梨香の奴隷ランクを５まで上げる事。
ランクを１つ上げるのに必要な経験値は１００。
処女喪失で10しか上がらない事を考えると、『調教』ってのをきっちりしないと中々上がらないと言う事だろう。
聡美との初体験は純愛モードのような行為だったから、恐らく処女喪失でしか経験値が貯まらなかったのだと思う。
なら、恵梨香には『調教』した上で処女喪失させて経験値アップを狙うのがいいだろう。