男の夢をかなえるアプリ 3
現在16歳、高校一年生の百合だが、クラスでは委員長を務めているらしいし、成績も僕に比べたら全然優秀。
性格抜きにしたら十分美少女だしこのゲージの通り魅力はあると思う。
…唯一気になる母性。
アイツに母性ってどういうことか…まあ気にすることじゃないかなぁ。
とりあえずもっとたくさんのデータを集めてみたい。
ちょっと明日からが楽しみになった。
夕食時の空気は、これまでより幾分明るいように感じられた。それでも、思い切って聞いた
「百合、最近どうだ?学校」
という問いに対しては
「どう、って…別に、普通」
としか返ってこなかった。
僕は例のアプリを開いているスマホを見た。
百合の好感度が1上がっていた。話しかけたことがよかったようだ。
アプリを使えば、もっと話してくれるだろうか?
質問して好感度UPなら、まさかこれで「辱めた」なんていう判定にはならないだろう。
『学校での悩みを話す』
そう入力してシャッターを押した次の瞬間、百合は再び口を開いた。
「…うちのクラス、文化祭の出し物なかなかまとまらなくて」
「どうしてまとまらないのかな?」
「何をしたいかバラバラなの。えりちゃん達は執事喫茶推しだし、繭ちゃん達はお化け屋敷したいっていうし、野上達男子の半分はメイド喫茶やれって言うし…高野君はお好み焼き屋台やろうって言うのよ…うちのクラス、部活で当日クラスの出し物にあまり時間を割けない人が多いから、その調整もあるし…」
「本当に大変だね。誰の意見を採用してもあちらが立たずになりそうだ…僕の知らない苦労をしてたんだね」
「そうなのよ。もうどの企画でもそろそろ申請出さないと許可が下りないかもしれないし準備が進められないし、頭痛いよ〜」
百合がため息をついてる姿なんて久しぶりに見た。
どうも根深い悩みのようだなぁ…
僕にいいアイデアが出せるだろうか。努めて親身に聞いてみる。
「百合は何がしたいんだい?」
「私は喫茶店がいいかなと思ってるんだけど、草薙君と一条君が執事服着るの嫌がっててね…」
その二人は協力したくないのだろうか、それとも当日は部活メインで活動したいから理由つけて拒否ってるのか…何だろう?
「その草薙君と一条君はなぜ拒否してるの?」
「自分たちが客寄せパンダ扱いなのが目に見えてるからというのと、恥ずかしいから、それに草薙君は高野君と仲が良くて彼の提案した屋台やりたいって言ってるし、一条君はお化け屋敷がいいらしいの。女の子達はメイド喫茶やれって言うのなら男子も執事服着なさいよって反発してる。でも二人が拒否するからそこでこじれて…」
悩みは深そうだ。またため息をついた。
でもなぁ…ふつうはそうなったら投票でもするんじゃなかろうか?
「投票とかしないの?」
「明日投票することになってる」
「それだと投票で決着しても、負けた方があまり協力しないかも知れないなあ。多くの人がまとまれる出し物がベスト、とは思う」
「そうだけど…」
僕は一旦箸を置き、裏紙とボールペンを持ち出し、茶碗とかを脇にどけて書き始めた。
執事喫茶
メイド喫茶
お化け屋敷
お好み焼き屋
何人か出てきたクラスメートの名前はもう一度確認しながら書き込んでいった。
“女子のキーパーソンがいて、とかならアプリでコントロールできるかも知れないけど、クラスの女子全体をある方向に、なんてことはできるだろうか。男子二、三名をコントロールすればすんなりいくかもだけどそれは無理だろうな”
僕は、そう考えながら、ボールペンを持って紙を眺めた。
“上から三つは、何か着るものだな。お化け屋敷以外は食べ物店…”
僕は、例年のハロウィンの盛り上がりの画像を頭に浮かべた。
「コスプレ喫茶、お好み焼きもある、っていうのはどうだろう?男子は執事、女子はメイド服の方向で進めるけど、ハロウィンみたいにお化けのコスプレでもいい、とか…」