格好が・・・ 31
「いらっしゃいませ」
遥が2人のテーブルに注文を取りに来た。
「遥さん、この企画いいね。カワイイよ。男子もかっこいいし」
「ありがとうございます。優奈先輩」
「ご注文は?」
「私はアイスコーヒー」
「高石君は?」
駿は下を向いていて、すぐには呼ばれたことに気づかなかった。
「あっ、僕もアイスコーヒーです」
駿はハッと気がつくと、注文を言った。
注文を聞くと、遥は2人の傍を離れた。
「どうしたの?遥さんの前で下を向いたりして」
優奈は駿に尋ねる。
「いや。こんな間近であんな露出の高い格好を見るのはどうも…」
駿がそう言うと、優奈はプッと吹き出す。
「高石くんたら…ウブねえー」
「吹田さん、お久しぶりです!」
優奈に気づき、望美と香織が傍に来て挨拶をした。
「あら、あなた達も来てたのね。雪乃から聞いてるけど…」
優奈は懐かしそうに望美と香織を見つめる。
「ところで、あの白いのは…」
「ああ、あれね!今年からうちの学校指定になった水着よ!」
望美に聞かれて、優奈はそう答えた。
「わあ!チョ、いえ、すごく、カワイイですね!今のスク水が嘘みたいです。ますます来たくなりましたよ、ねえ、望美」
「え、あ、うん…」
香織は優奈にそう言って望美にも振ったが、望美は曖昧に答えた。
「…男子の水着姿…」
香織は望美を後ろからパンと軽くたたいた。
「ヤダ、そんなのすぐ慣れるよ!」
「吹田先輩、この子たちは?」
「夏休みにプールで会ったんだ。中三だったよね」
優奈は望美と香織に確認する。
「はい」
駿は、この二人の短いスカートもどうも正視しづらい様子だった。
そこへ、ピーターパンの衣装を着た格好の紗綾香が入って来た。
「いらっしゃいませ!」
修が応対し、紗綾香を席に誘導する。
「あら!紗綾香ちゃん…」
優奈が紗綾香に気づき、声を掛けた。
「吹田先輩!それに…望美ちゃんに香織ちゃん!」
紗綾香も3人の姿を確認した。
「どうしたの、紗綾香ちゃん?そんな格好したままで」
「ちょうど休憩になったもんで。いちいち着替えるのも面倒ですから」
紗綾香はそう説明した。
「ピーターパンがいなくなって大丈夫なんですか?」
香織が紗綾香に聞いた。
「今は別の子が代わりにやってるわ」
「私もピーターパンをやってみたいです!」
香織がそんなことを言った。
「そうね!香織ちゃんがピーターパンで、望美ちゃんがウェンディーなんていうのはどうかしら?」
優奈がそんなことを言った。
「もうすぐ…雪乃先輩のクラスの『白鳥の湖』が始まりますけど、みんなで一緒に見に行きましょうよ」
「そうね!是非見に行きましょう」
紗綾香に勧められ、優奈はオーケーした。
「あなた達も…雪乃のお芝居…見るでしょう?」
「はい!もちろんです」
望美と香織も一緒に見に行くこととなった。
「私も、もうすぐ休憩になるから…一緒に見に行くわ」
ちょうどそこへ、優奈と駿の注文のアイスコーヒーを持って来た遥も言った。
「遥先輩、いっそのこと…そのままの格好で出て行きませんか?」
紗綾香が遥に向かって冗談めいたことを言った。