格好が・・・ 19
「水泳部女子bPの実力を誇る紗綾香ちゃん相手に、さすがだね。やっぱり新体操で鍛えてるせいかな?」
遥は、雪乃の見事な泳ぎに感心していた。
「ホント。日頃からスポーツに精を出してる人にはかなわないわ!」
泉はそう言って、雪乃と紗綾香がお互い笑顔で向き合うのを見る。
泉も遥も、“紗綾香ちゃんなりに雪乃先輩を元気づけようとしたんだな”と思った。
「アタシも何かスポーツやってればよかったな。遥もそう思わない?」
「ええ…そうね」
優奈が遥や泉の近くに寄って来た。
「一年の時だったけど、水泳の授業で、雪乃と麗美はクラスの女子の中でも飛び抜けて泳ぎがうまかったわ。2人とも、テニスとか新体操に限らず、スポーツに関してはやっぱり天才的な能力を持っているのね」
優奈は微笑みながら話す。
「私はそんな2人がうらやましかったわ。同時に、そんな素晴らしい2人と友だちになれてうれしかったわ」
遥と泉は、優奈と一緒に雪乃と紗綾香と改めて眺めた。
「そろそろお昼にしましょうか?」
優奈は皆に伝わるよう、やや大きい声で言った。
いつの間にか11時半。お昼近くになっていた。今ならまだ比較的すいているかもしれない。
彼女らは、施設内の水着のまま入れるレストランに入った。
「もう結構混んでるね」
「お客様、相席でもよろしいでしょうか?」
店内はどのテーブルも客が着いており、彼女たち7人が固まって座れる状態ではなかった。そこで、遥と泉と優奈、恵麻と杏、雪乃と紗綾香、3組に分かれて他の客と相席することとなった。
遥たち3人が案内されたテーブルには二十代前半ぐらいのカップルが先に着いており、優奈が“失礼します”と言って挨拶をした。まず、相手のカップルと向き合う位置に、左に泉、右に遥が座り、優奈は遥の横に座った。
「ねえ泉、吹田先輩とも話したんだけど、水着コンテスト、来年以降もやるようだったら生徒会役員でも出場できるようにしようと思うの。それでもって私、来年は出場しようと思うの。よろしくね」
遥は席に着くなり、泉にそんな話をする。
「おっけー。そのときは遥には負けないよ」
向かい側の男は、遥と泉をジロジロ見つめてニヤニヤする。どうも、遥と泉の際どい紐ビキニ姿に見取れているようだ。遥も泉も内心は不愉快だったが、黙って我慢していた。
そこへ、隣に座る女性が肘で男の脇腹を突いた。
「ごめんなさいね」
彼女は遥と泉に向かって詫びる。
「いえ…こちらもちょっとこのような格好で失礼しています」
遥と泉は同時に軽く頭を下げた。
「ところでさっき『イマドキの水着調べた』って言ってたけどどうやって調べたの?」
優奈がちょっと茶化すように、空気を明るくするように言った。
遥は調べたサイトの名前を言った。
「そのサイト、バックに○○がいるっていう噂があって」
向かいの女性が入ってきた。
「えっ、あのハゲオヤジ!」
○○は、聞けばだれもが顔を…というか頭を思い浮かべる与党の大物政治家だ。
「オヤジの趣味を載せてるってことですか?」
その女性はにやっと笑った。
「水着外出の話もあるし、国民薄着化の陰謀とかかもよ」
「まさか!」
カップルの男性側が笑い、5人に笑いが伝わった。
一方、雪乃と紗綾香は2人組の少女と相席になっていた。一方が純白のワンピース、もう一方がピンクのセパレーツの水着である。
「もしかして…白光学園新体操部の森崎雪乃さんじゃありませんか?」
純白の水着の子が雪乃に尋ねた。
「ええ、そうですけど」
「やっぱりそうだわ!こんな所で会えるなんて!」
彼女の名前は北原望美、もう1人は有村香織といった。2人は同じ中学の三年生で親友同士だという。
「まさか“白光学園の白い天使”の森崎さんに会えるなんて…光栄です!」
望美は部活で新体操をやっていて、以前から雪乃に憧れているという。純白の水着を着たのも“白い天使”の雪乃を意識してのことという。もう一方の香織は水泳部ということで、たちまち紗綾香と打ち解けた。
白光学園では、今年から白いセパレーツの水着が学校指定の水着になったこと、それを着ての水着コンテストが行われ、雪乃が2位、紗綾香が3位になったことが話題になった。
「私たちも白光学園を受験しようか?」
香織がそう言うと、
「そうね。私も白光学園に入りたいわ!」
望美もそう言った。