格好が・・・ 17
「すっごーい!そんな格好、とても真似できないよー!」
恵麻と杏はそう言って、遥と泉のあまりにも大胆な水着姿に驚いていた。恵麻と杏は共にビキニで、恵麻は赤、杏は黒だった。
「ほんと!根谷さんと片野さんにはかなわないわ!」
優奈もそう言って、遥と泉の姿に目を見張った。
優奈の水着は黄色のビキニ、雪乃は白のビキニだった。
また、紗綾香も泉に誘われて一緒に来ていたが、彼女の水着はやや大人しめの青のセパレーツだった。
水着コンテストの記念撮影の最中、紗綾香が泉の前に来て、
「片野先輩、とても素敵でしたよ」
そう言って握手を求めてきた。泉はそれに対し、喜んで握手に応じたのだった。以来、泉はすっかり紗綾香のことを気に入っていた。
新しい学校指定の水着や水着コンテストの影響か、今年の夏は、遥たちの高校の女子にはビキニやセパレーツの水着を着る子がとても多く、男子にもレジャー用水着としてビキニパンツを履く者が多かった。
「根谷さん片野さん、これじゃさすがに外は歩かないでしょ」
優奈は笑顔で言う。
「これじゃなくても水着じゃ歩きません!」
遥が冗談っぽく返す。
「それでも、例の政府の『超猛暑 緊急対策』の水着の話が各学校にも降りてきてるみたい」
「マジですか?!」
「さすがに強制ではないみたいだけどね」
数年前、あまりの猛暑の連続で気象局は最高気温40℃以上の日を新たに「超猛暑日」と定義した。
今年は県内で7月の途中の時点で数日の超猛暑日が発生する状況で、政府は夏休みに入る前日「超猛暑 緊急対策」を発表した。
その一つの項目に「水着での外出 解禁」があったのだ。
「それで、新学期から超猛暑日になりそうな日には学校指定水着を制服の代わりに着用してもいいらしい」
「それは恥ずかしいですよ」
「でも、水泳部の練習にはいいかもしれません」
紗綾香が会話に入ってきた。
「家から水着で、Tシャツとか羽織って来て、練習して、練習が終わったら適当に乾かしてまたTシャツを羽織って帰れば学校で着がえないで済みます」
恵麻「紗綾香ちゃん、可愛い顔して、ずい分すごいこと言うね!」
杏「さすが“ヘソ出しの妖精”だね!」
紗綾香「それでしたら“水の妖精”と呼んでください」
「ところで紗綾香ちゃん、どうしてよくおヘソ丸出しの格好をするの?」
泉が紗綾香に尋ねる。
この日、ここに来る際の紗綾香の格好は、丈の短いノースリーブシャツにホットパンツと、いわゆるヘソ出しルックだった。
「それはですね、憧れの水泳部の先輩が、女の子の身体でおヘソが一番好きだって言ったんです」
紗綾香は恥ずかしそうにうつむく。
「それに私、片野先輩や根谷先輩と違って、とても胸が小さいから、代わりにおヘソを目立たせようと考えたんです」
「なるほど!水木さんはおヘソで“カワイイ”を見出そうとしたのね」
優奈がそう言って感心する。
その直後、泉が紗綾香の前に立った。そして、頭を低くして紗綾香のヘソを見つめる。
「それにしても紗綾香ちゃん、可愛らしいおヘソね」
そう言って、泉は指先を紗綾香のヘソに入れて揉みしだく。
「きゃはっ…くすぐったい。片野先輩…やめてください…」
「やめなさいよ、泉」
遥が泉をたしなめる。
「ねえ雪乃、あなた、今年はビキニにしたのね。去年、おととしと、純白のワンピースだったじゃない」
優奈が雪乃に話しかける。
「うん。ちょっと気分を変えてみようと思って」
雪乃はそう返答する。
「でも、色は同じで、白にしているわね」
「だって、何といってもこれが私のイメージカラーだもん」
雪乃は笑顔でそう答える。
「それにしても優奈、麗美は誘わなかったの?一年と二年の時は一緒に泳ぎに出かけてたじゃない」
「麗美も誘ったんだけど、光平くんと2人で海に行くんだって。いいわねぇー」
「そうなんだ」
雪乃は浮かない表情になった。
「雪乃、あなた…やっぱり光平くんのことを…」