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ドコにもいかないでね…
官能リレー小説 - 女性向け

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ドコにもいかないでね… 1

真夜中…2時を回った頃だろうか。隣に寝ていた雛が突然跳ね起きた。ふと横を見ると彼女は荒い息をしながら上体を起こしていた。何事かと思って自分も起きる。
『おぃ…。大丈夫かょ。』下から雛を覗き込むと手で顔を覆い、声を殺して泣いている。
「ふ…っぅ…」
俺は驚いてしまって背中をさすってやる事しかできなかった。すると雛は両手を俺の首にゆっくり回して抱きついてきた。そんな子供みたいな行為が可愛く思えて戸惑いながらも抱き返した。どれくらい経っただろう。鼻声で雛が呟いた。「健吾は…健吾はドコにもいかないよね」

雛はまた夢を見ていたらしい。最近は忘れかけていたが雛には家族がいない。一人っ子だからもちろん兄弟も。両親を幼い頃に事故で亡くし、施設で育った。だが愛情に恵まれずに育ったらしい。今でこそ俺と冗談を交わして笑ったりするが出会ったときはそんなことは考えられなかった。愛情を得たいがために体を売るようなそんな子だった。

「ゴメンね…。」俺は雛の声で我に返った。普段、甘えることに臆病になっているのにこういう時は子供のように素直に甘えてくる。愛情に飢えている証拠なんだろうと思う。俺に出来ることは一体何だろう。
鳥の泣き声がウルサイ……
『………』
今度は俺が飛び起きた。明るい光がカーテンの隙間から零れている。時計をみるともう8時だ。隣で俺の腕を枕にしてスヤスヤ眠る雛を見て今日が日曜だと思い出した。「ん〜…おはよう。」 雛は欠伸をしながら起き上がる。昨日の事をおぼえてるのかいないのか。呑気な奴だ。

健吾はいつだって優しい。私はあの日から何回救われただろう。薄汚い感情が渦巻く都会で一人ぼっちになった私を助けてくれた。お金よりも私を必要としてくれる人が欲しかっただけなの。私を置いて死んだ両親…悲しくて悔しくてどうしようもなかった。あの時のことはあまり思い出したくない。
健吾と会ったのはそんなトキだった。真夜中に土砂降りの中傘もささずにフラフラしていた…するとラグビーでもやってそうなガタイの大きな男が近づいてくる。
『アレ?こんな夜中に傘もささずにどこ行くの?』
随分、不躾な人だと思った「別に…」
自分は冷たく返した。

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